2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520800
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀 裕 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50310769)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 讖 / 皇位継承 / 予言 |
Research Abstract |
〔研究のおもな内容〕1.研究成果の一部を論文としてほぼまとめることができた。2.東アジアにおける讖の資料の収集をさらに実施した。『古今図書集成』や漢籍のデータベース、あるいは朝鮮史のデータベースを活用して調査をすすめるとともに、朝鮮の金石文の調査も実施した。3.予算の関係で、わずか1つではあったが、韓国語の朝鮮古代の祖先祭祀に関わる論文を翻訳した。日本の霊的権威と比較することが目的である。4.中国や日本近世の祥瑞に関わる資料を閲覧し、讖に関する資料収集を実施した。その際、勤務先図書館が所蔵する漢籍を利用するとともに、名古屋市の図書館においても調査を実施して、関連資料の収集に努めた。5.日本古代の神判に関する資料の収集を実施した。日本古代の讖出現に、神判の要素が見受けられるためである。〔研究の意義及び重要性〕東アジア世界における讖出現の具体的様相が明らかになり、日本古代に出現した讖文の歴史的位置が明確になってきた。一つは、王位継承や王朝の正当性を示すために、讖が利用されることは一般的であり、唐代前期や武則天期には顕著であったことから、日本の讖もこの影響を受けていることは間違いない。もう一つは、大陸では材質が石であることが多いが、日本の8世紀前後にはそうした例はなく、素材の面では大きく異にしていることが明らかになった。さらに、日本古代の讖文が孝謙・称徳天皇期に集中して出現する理由も、唐や武則天などの影響だけでなく、当時の皇位継承の構造的特質である点が明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展している点は、(1)研究成果の一部を論文としてまとめることができつつあることと、(2)東アジアの讖の用例を多く収集することができたこと。不十分であった点は、当初予定していた9世紀以降の説話集や漢詩文・和歌集などの調査が実施できなかった点があげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.論文を研究成果の一部として発表すること。2.9世紀以降の日本古代の讖文を調査・収集する。その際、皇位継承だけでなく、当初の研究計画にも記載されたように、広く政治史と関わる讖や、聖徳太子信仰・弘法大師信仰などと関わる讖文を検討する。3.東アジアの讖の収集を継続するとともに、とくに9世紀以降における人物の往来を検討することで、讖の伝播と受容についての理解を深めることができると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.日本古代史においては特に9世紀以降の資料収集に宛てるとともに、中国・朝鮮史については、広く讖を調査するための基礎資料の収集を行う。2.大阪・滋賀へ資料収集のための調査旅行を実施する。聖徳太子信仰に関わる遺物の調査と、延暦寺の史料に掲載される讖文が対象である。3.資料の整理・収集に当たって、アルバイトを雇用する。4.昨年度予算の関係でできなかった韓国語の論文の翻訳を行う。
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