2013 Fiscal Year Research-status Report
兵農分離制下における身分的中間層に関する基礎的研究
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23520802
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉田 ゆり子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50196888)
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Keywords | 身分 / 兵農分離 / 侍 / 地域社会 / 郷士 / 牢人 / 周縁 / 由緒 |
Research Abstract |
2013年度は、信濃国と山城国の牢人と郷士について史料収集と分析をすすめる一方、「侍」(武士)の身分意識について山鹿素行の職分論を中心に考察した。その研究実績の概要は、下記のとおりである。 1.信濃国下伊那地域については、これまで翻刻された佐藤家本『熊谷家伝記』のもととなった宮下家本『熊谷家伝記』を翻刻する作業をすすめ、2014年度中に原稿を完成させてる予定とした。また、新たに良質の史料である下瀬村上松家文書の収集を行い、上松家と地域との関係を考察する作業をすすめた。 2.山城国葛野郡川島村の村方文書と革嶋家文書を収集し、川島村と革嶋家との関係を山城国相楽郡上狛村と狛氏との関係と比較しながら考察をすすめた。その結果、在地を遊離していった狛氏が在地の宮座に対して、旧来の国領主として象徴的位置におかれていたのに対し、革嶋家は宮座の構成員となっており、しかし「勤仕」の身として村方取締りを差配する立場と認識されていることも明らかになってきた。今後、仕官と浪人という状態が村人との関係に反映するのか否か、また村人や革嶋家自身の意識にも影響するのか検討を深めることが、兵農分離体制下における在地に残った「侍」の家を考察するために必要であると認識した。 3.山鹿素行の侍に対する思想を「武士道」という視点から考えるのではなく、職分観念からの身分論として捉え直し、侍とは何か、侍身分について再考する試みを行った。さらに今後は、「家」としての侍意識と、仕官した「個人」としての侍意識の区別を行いながら検討を行うことにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画にある『熊谷家伝記』の翻刻作業が遅れている。また、信濃国伊那郡下瀬村上松家文書という良質な史料を収集することができたため、その史料内容を確認した上で研究成果をまとめる必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
『熊谷家伝記』の翻刻作業を行い、あわせて研究成果公開のために、ホームページ整備を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
『熊谷家伝記』の翻刻作業が遅れていること。また、良質な信濃国伊那郡上松家文書の史料全容を確認する必要が生じたため。 『熊谷家伝記』の翻刻作業を依頼する謝金として使用する。また、研究成果公開のためにホームページを整備する経費として謝金に使用する。
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