2012 Fiscal Year Research-status Report
近世日本における自然資源の利用と管理に関する歴史学的研究
Project/Area Number |
23520803
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
高橋 美貴 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90282970)
|
Keywords | 自然資源の利用と管理 / 近世・近代日本 / 明治期県庁文書 / 豆州内浦 / 資源保全 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本の近世社会を主な事例として、自然資源の利用と管理に関する歴史学的研究を行うことである。このような目的にアプローチするため、①特定フィールドを設定して資源変動と地域の生業・社会の対応を事例に則して掘り下げる地域史研究の作業と、②全国各地に明治期の行政文書として残されている、伝統的生業の技術や技能・慣行などに関する調査資料の概要調査とデータ収集、という二つの作業を進めることを計画した。本年度は、以下のような作業を行った。 1、①に関わる作業として、前年度の作業を継承しつつ、伊豆国君佐波郡内浦地域の史料群を素材とした史料集である『豆州内浦漁民史料』(全三冊)のデータベース化をひとたび終え、その分析・論点整理の作業に入ることができた。 2、②に関わる作業として、平成24年7月17~21日に宮崎県文書センター所蔵宮崎県庁文書、平成25年3月5~9日に島根県庁所蔵島根県庁文書の調査を行った。宮崎県庁文書については公開に強い限定が付されており、残念ながら十分な資料調査を行うことができなかったが、島根県庁文書については相応の史料の残存していることが判明した。 3、平成24年12月22日に東北大学災害科学国際研究所にて研究会に参加した。この研究会に関わって、「一九世紀仙台藩における流域とサケ資源保全政策ーサケからカワ・ヤマへー」と題した論文を年度末に脱稿・提出した(刊行年月日未定)。 4、昨年度脱稿した論文は出版計画が止まってしまったが、それとは別に、本年度は「一九世紀末~二〇世紀初・魚油を通してみた日本と世界ー石巻周辺地域における魚油変動を出発点としてー」と「問題提起 漁業史研究からみる環境史研究への展望」を公表することができた。また、近世・近代の水産資源繁殖に関わるこれまでの論考を著書にとりまとめる作業を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①特定フィールドを設定して資源変動と地域の生業・社会の対応を事例に則して掘り下げる地域史研究の作業と、②全国各地に明治期の行政文書として残されている、伝統的生業の技術や技能・慣行などに関する調査資料の概要調査とデータ収集、という二つの作業課題について、①については豆州内浦を事例とした史料分析データの収集を終え、分析作業に着手することができ、また②については、漁業に関わる史料に限定はされているものの、新たに宮崎県・島根県を対象として一定量の画像データを収集することができたため。また、論文として「一九世紀末~二〇世紀初・魚油を通してみた日本と世界ー石巻周辺地域における魚油変動を出発点としてー」(菊池勇夫・斎藤善之編『講座東北の歴史 第四巻 交流と環境』清文堂出版・285~309頁)のほか、問題提起文「漁業史研究からみる環境史研究への展望」(『地方史研究』358〈第62巻第4号〉・58~61頁)を発表することもできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、20万円という限られた予算のなかでではあるが、本年度に引きつづき、①特定フィールドを設定して資源変動と地域の生業・社会の対応を事例に則して掘り下げる地域史研究の作業と、②全国各地に明治期の行政文書として残されている、伝統的生業の技術や技能・慣行などに関する調査資料の概要調査とデータ収集、③「近世・近代の水産資源の利用と管理に関する歴史学的研究」という本科研テーマに合わせた論文集の作成を進めたい。 ①については、豆州内浦を拠点とした史料分析データを用いた分析的検討や立論の作業を進めたい、と考えている。 ②については、過去二年間に調査を行った愛媛県・滋賀県・山口県・島根県・宮崎県のうち、とくに史料的に興味を感じている愛媛県か山口県の追加調査を一度でも実施できたら、と考えている。また、③については、原稿を完成させ、出版に向けて業者との交渉を進めたい。問題点としては、とくに②の作業について、画像データの収集で手一杯となり、史料の分析に十分な時間と労力とを投入しえていないことである。②の調査は継続するが、その史料分析とデータ化の作業を進めうるか否か、進行状況を勘案しつつ次年度の計画をその都度再検討したいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残った予算額(20万円)を考えると、前述した②の作業(全国各地に明治期の行政文書として残されている、伝統的生業の技術や技能・慣行などに関する調査資料の概要調査とデータ収集)の一環として、追加調査に一ヶ所出向くのが精いっぱいと考えている。もしも残額が出た場合には、③の作業(「近世・近代の水産資源の利用と管理に関する歴史学的研究」という本科研テーマに合わせた論文集の作成)に関わって必要となるであろう、文献の購入などに充てたいと考えている(できれば学術書としての出版を目指したいと考えているので、今のところ関係論文を取りまとめた、科研報告書の作成費に充てることは考えていない)。
|