2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520806
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
加藤 千香子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (40202014)
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Keywords | 在日朝鮮人 / 北朝鮮帰国事業 / 戦後復興 / 日立闘争 |
Research Abstract |
本研究では、以下の二点で成果をあげることができた。 第一には、戦後復興を経て形成される戦後日本の「公共性」とその変容過程についての研究である。論文「1970年代日本における公共性の転換ー川崎・在日朝鮮人からの問い」としてまとめ、高嶋修一・名武なつ紀編『都市の公共と非公共』(日本経済評論社、2013)に掲載した。この研究では、戦後日本の「公共」を「非公共」との関係で問題化し、政策課題としての「戦後復興」過程における「包摂と排除」に焦点をあわせた。具体的に検証を行ったのは、日本の戦後復興が「単一民族社会」形成を指向していく経緯と、そこで他者化される在日朝鮮人の問題である。1950年代における在日朝鮮人の地域社会からの排除の論理やその実態、さらにその地域社会の構造が、1970年代における在日朝鮮人二世からの告発を起点とした運動―川崎を拠点とした「日立闘争」―によって変容していく過程に注目した。さらに、その構造は、1990年代以降グローバル化のなかでの「多文化共生」政策のもとではどのように継続し、今日に問題を投げかけていると言えるのか、現代の都市社会における問題を視野に入れて考察を行った。 第二は、第一の研究の中で浮かび上がった在日朝鮮人の日本の「公共」からの排除の過程において、大きな画期と考えられる「北朝鮮帰国事業」についての研究である。北朝鮮帰国事業については、これまでにも日本政府や赤十字、朝鮮総連の動向を中心に据えた研究はあるが、本研究で戦後日本社会に視座を据えて検証を行った。それにより、戦後日本社会―特に都市において「単一民族」論を強め、それが排除の論理を生むという問題を浮かび上がらせることが出来た。この成果は「1950年代における包摂と排除―戦後復興と在日朝鮮人帰国事業」として論文にまとめ、樋口映美他編『<近代規範>の社会史』(彩流社、2013)に収録した。
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