2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520812
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
古市 晃 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (00344375)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日本古代史 / 古代国家成立論 / 王権論 / 王宮 / 王陵 |
Research Abstract |
本研究が目的とする5・6世紀における王宮の存在形態とその変遷過程について、申請段階で以下の5点の課題を設定した。第1、王名の命名原理の検討。第2、王名の継承と王宮の継承との相関関係の抽出。第3、王宮の所在地とその変遷。第4、王宮に関わる反乱伝承と倭王権の権力集中。第5、王名継承原理の変化と6世紀の転換。これらの課題を解明すべく、日本古代史、考古学を中心とする先行研究を検討し、関係史料の博捜に努め、また関係する地域の踏査を行った。当面の見通しとして、1、王名は地名(王宮名)、資養氏族名、通称が基本的形態であり、そのうち地名に基づくものが重要であること、2、王宮名に基づく王名は基本的に男系により継承され、それには王宮に附属する諸権益がともなったこと、3、王宮は奈良盆地南部の中枢部王宮群と奈良盆地北部、京都盆地南部、大阪平野の周縁部王宮群に大別可能であり、後者は6世紀以降、消滅すること、4、周縁部王宮群の所在地は王族の叛逆が伝承される地域と一致すること、5、6世紀前半、欽明朝を画期として、王宮に基づく王名が蘇我系王族に集中する傾向が見られ、このことは蘇我氏による王族の諸権益の集積によるものであると結論づけた。その上で、5世紀段階の倭王権の流動性を指摘し、その要因として倭王を輩出する王族が仁徳系、允恭系といった複数の王系に分かれ、対立する状況にあったこと、また周縁部に分布する傍系王族の叛逆伝承が一定の史実に基づくものであることを指摘した。このように、申請段階での課題については大枠としては解明の方向に向かいつつある。さらなる課題として、傍系王族の存在の指摘とその特質や、奈良盆地における倭王宮の存在形態の検討に着手した。これらの研究成果について、論考の形で提示すると共に、市民向けの講演会等で概要を説明した他、米国・イェール大学のシンポジウムでも報告し、日本研究者らと意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階で述べた研究上の5点の課題(王名の命名原理の検討、王名の継承と王宮の継承との相関関係の抽出、王宮の所在地とその変遷の検討、宮に関わる反乱伝承と倭王権の権力集中、王名継承原理の変化と6世紀の転換)について、全体的な枠組みを検討し、その概要を投稿論文その他によって提示し得たとことによる。さらに、傍系王族の存在を推定し、倭王宮の存在形態についての検討を進めるなど、当初のの研究課題を展開させ得ていると理解するところによる。前者についてはこれまで河内政権論といった形での、倭王位をめぐる王族間の対立といった視角は存在したが、倭王位には就き得ない傍系王族についての検討は個別的なものしか存在しない状態であった。この点について、記紀の諸伝承と地域社会に関わる史料を関連させて理解することで、一定の見通しを得られるのではないかと考えるに至っており、この論点を展開させ得るならば、王宮研究のみならず、倭王権論にも一定の寄与を行い得ると理解している。後者についても、これまで歴代遷宮論といった、いわば静態的理解に留まっていた倭王宮研究に対し、名代・子代論の再検討により新たな展開を促すことができるのではないかという見通しを得るに至っている。以上のような状況を踏まえ、「研究の目的」はおおむね順調に進展していると理解する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって解明の必要が明らかになった、倭王宮の存在形態の検討、また傍系王族を含む王族全般の存在形態の検討を行う。当面、王族の王族たる所以を検討する上で、当該期の対外関係と地域社会の関係解明が必須であり、その中で王宮の存在形態も解明されるべきとの見通しを得るに至っており、この点の解明に向けて検討を始める。同時に、当該期の倭王権の不安定性、軍事的対立状況も明らかとなったが、これらの状況を、奈良盆地北部や京都盆地、大阪平野に点在する周縁部王宮群の存在形態から検討を行う。上記の成果に基づいて、当初より予定していた隣接諸学との比較検討を行う。特に王宮の存在形態解明と密接な関連を有するのは、考古学における王陵研究の成果である。現在、新たな研究成果が続々と現れており、最新の研究成果を取り入れつつ、文献史の方法論に基づく倭王権論を提示したい。なお機会が得られれば、国際的視野に基づいた研究課題の推進に取り組むべく、諸外国の関連分野の研究者との意見交流の場を持ちたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は現地踏査を踏まえた上で研究成果を提示する予定であったが、当面、まとまった成果の提示を優先したため、現地踏査を充分に行うことができなかった。したがってまず、次年度予定分とあわせて、5・6世紀の支配構造と当該研究の関係を追求すべく、現地踏査をともなう出張を行う(名代・子代地名、王名関係地名の遺存地域を中心とする)。当該研究に関連する図書を購入する(日本古代史、日本考古学、文化人類学等)。研究者間での意見交換を行うべく、研究会を開催する(2回程度)。なお機会が得られれば、国際的視野に基づいた研究課題の推進に取り組むべく、国外出張も含めて諸外国の研究者との意見交流の場を持ちたいと考えている。研究成果を論考の形で公開し、広く意見を聞くべくその抜刷等の作成費用に充てる。
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Research Products
(7 results)