2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520814
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
本多 博之 広島大学, 文学研究科, 准教授 (30268669)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 銀流通 / 幕藩制市場構造 / 戦国時代 / 豊臣政権 / 物流 / 流通経済 / 石見銀山 / 西国 |
Research Abstract |
本年度は、予定していた学術図書のほか、自治体史・史料集を補充・整備した。また、史料収集のための出張調査は、研究課題に関する歴史資料を所蔵する東京大学史料編纂所や山口県文書館を中心に、原文書もしくは影写本・謄写本・写真帳の閲覧やマイクロリーダーによる影写本複写を実施した。具体的な作業としては、戦国期の物流そのものを構成する経済拠点と「モノ」の流れの実態について山陽地方西部を中心に分析した。その際、瀬戸内海沿岸や島嶼部の港湾の中世地形に加え、寺院や神社など宗教施設や領主居館などの空間構成を復元する一方、河川や陸路を注視しながら後背地も含めた経済圏のあり方を検討し、それが山陰側とどのような形で連結しているのか、陰陽交通の様相について考察を試みた。次に、物流を支える「人」に焦点を当て、多様な身分や生業をもち、広域的に経済活動を行う戦国期の商業勢力(商人的領主、船持領主)のあり方と、豊臣政権における存在形態について比較検討し、初期豪商の成立状況を探った。その際、16世紀後半の物流の展開に大きな影響を与えた銀の社会浸透と、統一政権や諸大名のもとで生じた銀の環流状況について具体化した。さらに、大坂・京都と各国の城下町との間に成立した「新たな求心的市場構造」を素材とし、中央政権主導の物流が登場する一方、近世城下町成立の傍らで消滅する中世(港湾)都市の具体相について広島や石見温泉津を素材に検討した。以上の研究成果の一端を、「中近世移行期西国の物流」「西国の流通経済」「戦国豊臣期の瀬戸内海水運と政治権力」の論文(雑誌・図書)にまとめ、「信長が見た戦国京都の貨幣事情」「戦国豊臣期の政治経済構造と東アジア」の学会発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究全過程の基礎段階にあたるため、当該研究に必要な図書や写真複製資料の購入と、すでに収蔵史料の概要が判明している史料保存機関での史料調査を進めた。具体的な作業としては、まず「兵庫北関入船納帳」に登場する船籍地のうち、備讃瀬戸以西の港の一部について国土地理院発行の地形図と現地調査の実施によって中世の海岸線を推測し、景観復元に努めた。また、西国の中世遺跡のうち貿易陶磁器が比較的多く出土する15~16世紀の遺跡を抽出し、地図上に落とす作業をおこない、搬入経路(海運・河川水運・陸運)について分析した。さらに、豊臣政権期の大坂や京都(伏見も含む)で実施された作事・普請に動員された西国大名の動向や材木・榑など資材の輸送状況、大名領国内での資材調達・動員がわかる史料、例えば近江蘆浦観音寺文書や大和今井家文書などを収集した。そのほか、応仁・文明の乱後の在京守護の動向や公家の下向事例を蓄積し、京都周辺都市群の経済発展の様相や流通ネットワークの形成状況について分析を試みた。また、地方の流通経済拠点の実態を明らかにするため、瀬戸内海沿岸部や島嶼部の港湾の空間構成(景観)復元に努める準備作業をおこなった。 以上をふまえ、予定した作業内容に対し、現在までの達成度はおおむね順調と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、関係図書の購入を継続するほか、東京大学史料編纂所・内閣文庫・国立国会図書館で史料調査を実施し、必要史料については写真複製資料として購入する。また、史料収集のための出張調査を、山口県文書館のほか、大阪城天守閣や愛媛県の村上水軍博物館で実施する。特に、史料保存機関については、史料内容や分量を検討した上で、次年度以降も史料採訪を継続して実施する。なお、写真撮影はデジタルカメラでおこない、古文書全体および花押・印章の画像データを電子情報として蓄積していく予定である。内容的には、上半期に物流を担った「人」やその経済活動に焦点を当て、多様な商人と生業としての多面性について分析するとともに、領国を越えて活動する商業勢力やその経済活動の実態について明らかにする。また下半期に、首都経済圏の歴史的展開を探るため、大坂本願寺のマチ構造や応仁の乱後の京都再生の過程を確認するとともに、豊臣政権期に登場した新たな求心的市場構造について理解するために、京・大坂における作事・普請の状況と、そのための資材搬入の状況について既に収集した史料をもとに整理する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
関係図書(専門学術書・自治体史・発掘調査報告書)や写真複製資料・地図(地形図・地籍図)を購入するほか、関係論文について大学図書館を通じ複写請求して入手し、従来の研究成果を整理するとともに、関係史料を蓄積して分析を進める。これらが、消耗品費の使途である。また、戦国期の地域経済拠点(港湾・宿・市)の空間構成(景観)を復元するため、自治体史や国土地理院の地形図をもとに現地調査を実施するほか、現地教育委員会の文化財担当者を訪ねて小字名や寺社・領主館など旧跡についての情報を入手する。そして、活字化されていない古文書・古記録類についても写真撮影もしくは筆写するための出張調査をおこなう。これらが旅費である。さらに、収集史料の整理・データベース化の作業に謝金を充てたい。このほか印刷費を「その他」の項目から支出する予定である。なお、購入前の消耗品算定額と実際の価格に差が生じたため「次年度使用額1,378円」という状況が生じた結果をふまえ、次年度は正確な価格把握に努めたい。これについては、次年度請求研究費と合算して必要文具の購入に充てたい。
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