2012 Fiscal Year Research-status Report
沖縄県北部地域における字文書の保存状況と字誌への活用方法に関する調査研究
Project/Area Number |
23520824
|
Research Institution | Meio University |
Principal Investigator |
中村 誠司 名桜大学, 国際学部, 教授 (30279426)
|
Keywords | 沖縄 / 北部地域(やんばる) / 今帰仁村 / 字文書 / 字誌 / 地域史 / 市町村史 / 研究方法論 |
Research Abstract |
沖縄は、近代初期1879年まで琉球王国として、日本の異国であった。1945年アジア太平洋戦争終結以後1972年の“施政権の返還”(日本復帰)までの27年間は米国の統治下におかれた。沖縄の地域史研究は、日本の地方史研究において特異な位置と課題を有しつつ、1972年の日本復帰後たいへん活性化してきた。しかし、沖縄戦の戦禍により、沖縄は総体として地域文書資料の伝存がきわめて少なく、また市町村においても戦後行政文書の整理保存状況がよくない。そのことが、沖縄の地域史(市町村史・字誌)研究を困難にしている。 一方、沖縄に特徴的な“字誌”(最小単位の地域社会史誌)研究が盛んである。字誌研究は、地域住民の伝承・経験的知識に多く依拠するが、加えて地域固有の伝存文書資料を活用することにより、字誌の内容を精確・豊富にしていく可能性と課題がある。字文書資料の利用が少ないのは、その整理・資料化がきわめて困難・面倒なためであろう。また市町村史の調査研究においても、重要資料であるが、字文書資料はほとんど注目されず、把握されていない。本研究は、沖縄における字文書資料の伝存状況を、沖縄県北部地域(12市町村・188字)において、その概要を把握し、字誌・市町村史への活用を事例的かつ方法論的に試みることを目的とする。 平成23・24年度は、字文書資料の実体を理解し、字誌研究に繋ぐために、閲覧利用可能な今帰仁村兼次について、文書資料の調査と整理作業を進めた。その実感的理解に基づき、北部地域の全字を対象に、字文書の伝存状況把握の基本調査を実施した。基本調査の整理・分析は現在進行中であるが、取材調査と合わせて判断すると、北部地域で字文書資料の有意な調査が可能な字は、次の字である。名護市は、旭川・山入端・田井等・饒平名、国頭村は奥、大宜味村は喜如嘉・饒波ほか数字、今帰仁村は兼次ほか数字、恩納村は南恩納ほか数字である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の基礎データを構成する、今帰仁村兼次の字文書の整理と情報化の作業は、当初想定した以上にきわめて膨大な作業量になることがわかった。基本作業は手を抜けない1回性の作業であり、有能な作業スタッフ(補助員)を養成確保できる時期に、集中的に取り組むことにした。そのため、平成24年度の研究計画を修正し、達成度にやや遅れを来たした。 整理作業は、今帰仁村兼次の字文書資料に集中した。当初、伝存する兼次字文書は約2000件と推定された。その内まとまっている「公文綴簿冊」(1950-56,57,58,1970,71,72,76,77年度)文書について、1文書=1件=1カード方法で、Wordに文書内容情報を要約記入し、さらにExcelにDB化した。結果、1950-56年度(195件)、1957年度(239件)、1958年度(199件)、1970年度(359件)、1971年度(201件)、1972年度(302件)、1976年度(238件)、1977年度(215件)、合計1767件を資料・情報化した(12ファイルに整理)。 質的に良好な字情報が作成・整理できた。ただ、やや専門的技能と勘を要し、膨大な作業量であるので、他の字誌で同じように実施できるかは検討課題である。本研究においてできるだけ一般化・マニュアル化を図り事例を提案する。地域研究は本来このような基礎的作業を伴うものであろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は本年度平成25年度を最終年度とするので、本年度について記す。本研究のゴールは、大きく2つ設定できる。 A 北部12市町村・188字について、字文書資料の伝存状況を把握する。 B 今帰仁村兼次について、①字文書資料を整理する(1文書の内容に対応する資料カードの作成/目録DB作成)、②一部重要文書の翻字化をふまえて、「兼次字誌研究資料」を作成・編集する ③並行して兼次関係者有志で「兼次研究会」を組織する ④字文書資料の読み合わせ(解読)を通して、当事者の経験と記憶を“記録する”作業・活動を進める ⑤この一連の活動を「兼次字誌」の準備工程とする ⑥これら全体を本研究のテーマ「字文書資料を基本にした“字誌づくり”」として方法論化する 今帰仁村兼次の字文書資料研究が中心課題であるが、比較研究として、①国頭村奥文書資料データの整理、②大宜味村饒波文書の確認、③名護市旭川文書(整理は名護市史編さん室)の確認などを実施する。以上の調査研究の全過程・成果を「報告書」にまとめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用は資料整理(人件費)を中心に執行する計画である。
|