2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520836
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
久保 健一郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60257235)
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Keywords | 兵糧 / 兵粮 / 戦争 |
Research Abstract |
当該年度は、前年度に引き続き、研究補助者の協力を得て、日本中世における兵糧に関わる史料を収集し、分析を行った。地域的には、中部・中国・九州地方が中心で、『信濃史料』、『広島県史』古代中世資料編、『岡山県史』編年史料・家わけ史料、『岡山県古文書集』、『兵庫県史』史料編、『編年大友史料』等を検索した。また、鎌倉時代については『吾妻鏡』を古文書収集完了以前に検索しておく必要があると考え、東京大学史料編纂所のフルテキストデータベースから検索した。 以下、分析の結果を、研究の目的として掲げた①存在形態②地域的特徴③時期的変遷に沿って述べる。①に関しては、現物=モノとしての兵糧があるのは当然であるが、戦費等に充てられる交換・利殖手段=カネとしての兵糧も多く見られた。また、モノとしての兵糧においては、米を明確に示す事例がある一方、他の食糧で明確に兵糧とされる事例が見出せなかったところに注意を引かれた。②に関しては、カネとしての兵糧のなかでも、交換におけるたんなる代価として、すなわち、戦争と関連のないところでの支払などで「兵糧」が用いられている事例が、特に東国で見られ、他の地域ではまったく見られないことが明らかになった。③に関しては、兵糧を戦争のなかへ積極的に位置づけることが戦国時代以前にはほとんど見られないことや、ほぼ南北朝時代頃からカネとしての兵粮が見られるようになることが、全国的傾向であることが裏づけられた。 以上、戦時・平時における兵糧の多様なあり方を明らかにした。これらは、特に戦争論・社会経済史における重要な成果になったと考える。成果の一部は論文「戦国時代の兵粮」(『歴史評論』755、2013年)として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度途中において、研究補助者2名が交通事故に遭うというアクシデントに見舞われた。年度途中ゆえ、急な交代もままならず、幸い2名は比較的短期で回復したが、史料収集が遅延することとなった。全国的傾向を読み取るためには、東北・四国等の史料検索も行う必要があるが、古文書については、現時点で予定の8割は検索したと考えるが、日記・軍記からの収集はできていない。ただし、研究計画を立てた時点で、遅延が生じたり、検索できない史料があったとしても、限定を付した上で、なお重要な成果を得ることは十分に可能と考えており、実際、上記のとおり成果を上げることができた。したがって、全体として、おおむね順調に進展している達成度と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
兵糧に関わる史料収集については、古文書からの収集を充実させることに重点を置き、『青森県史』『仙台市史』『南北朝遺文 東北編』『愛媛県史』『高知県史』『南北朝遺文 中国・四国編』等から検索を行う。ついで、過去2年収集した史料と併せて中世兵糧データベースを作成する。また、収集した史料の分析を行い、研究目的に掲げている①存在形態②地域的特徴③時期的変遷の検討をさらに深めて論文化、公表するとともに、成果をまとめた著書を準備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品が予定よりも消費されなかったので、1,826円が次年度使用となった。文具を補充しておくこともできたが、次年度は交付される研究費もかなり限られてくるので、次年度の論文抜刷作成補填とする方が、より適合的と判断した。
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Research Products
(1 results)