2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520838
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷口 眞子 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (70581833)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 恩赦 / 近世法 / 罪と罰 / 幕藩関係 / 裁判 |
Research Abstract |
本研究の目的は、江戸時代に幕府と藩が実施した恩赦について、その関連史料を収集・分析し、恩赦をめぐる幕府・藩・寺院の複層的・重層的関係と日本近世の法・裁判の特徴を考察するところにある。2011年度の研究成果は、史料の調査・収集と研究発表に分けられる。 まず加賀藩については、「御刑法帳」など、すでに翻刻されている史料のコピーを取り、目を通した上で、金沢市立図書館近世史料館に所蔵されている「加越能文庫」の史料調査を、2011年8月10日~12日に行った。カメラ撮影と史料館のコピーにより、加賀藩の恩赦に関する史料は、ほぼ収集することができたと考えている。長州藩については、山口県文書館所蔵「毛利家文庫」の史料調査を、2011年9月1日~4日に行った。「毛利家文庫」には藩主の家督、叙位任官、官位昇進、初入国などの際に行われた恩赦の実態を記した史料が、大量に残されている。4日間にわたる史料調査で、数千コマの史料撮影を行った。 研究報告は当初の予定通り、岡山藩池田家の構成員(藩主・室・子)の「法事の赦」について、2011年8月29日、東京大学法学部で開催された近世法史研究会において、「『法事の赦』にみる近世の罪と罰」というタイトルで発表した。 また、岡山藩における将軍回忌法要の研究については、早稲田大学史学会編『史観』165冊(2011年度)に、「岡山藩における将軍回忌法要の恩赦」というタイトルで論文を執筆した。 史料の調査と収集、ならびに研究報告・論文執筆は、交付申請書に記載した通りに進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岡山藩池田家の回忌法要による恩赦、ならびに岡山藩で行われた将軍家の回忌法要による恩赦については、恩赦適用者の決定過程、実施までの手続き、恩赦の嘆願過程における社会の役割など、罪人が赦免される具体的過程を詳細に検討することができた。当初の予定通り、岡山藩池田家の構成員(藩主・室・子)の「法事の赦」について、2011年8月29日、東京大学法学部で開催された近世法史研究会にて、「『法事の赦』にみる近世の罪と罰」というタイトルで発表したほか、早稲田大学史学会編『史観』165冊(2011年度)に、論文「岡山藩における将軍回忌法要の恩赦」も載せた。 岡山藩と同様の視点で比較をするために、考察対象として選んだ加賀藩と長州藩については、現地での史料調査により大量の史料を収集した。加賀藩については、研究計画策定段階では、2年連続で現地での史料調査が必要ではないかと考えていたが、予想以上に史料収集が進んだ。長州藩については、目録で史料調査は行っていたものの、実際の史料がいずれも大量であったため、結果的に史料撮影は数千コマに及んだ。 なお岡山藩については、当初、近世前期から幕末に至るすべての恩赦の記事を「留帳」や「日記」などの原史料から拾い出す計画をたてていたが、史料が大量で複写代がかかりすぎることに加えて、研究の結果、赦免者の人数や赦免の種類は、誰の回忌法要かという要素以外で決定されることがわかったため、計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年度は大震災の影響で研究の開始が遅れたが、交付申請書の研究計画に記した通りに進めることができた。2012年度もまた、申請書に書いた計画に沿って、研究を続ける予定である。 2012年度だが、まず岡山藩池田家の構成員の「法事の赦」については、2011年度に報告した研究内容をもとに論文を執筆する。さらに、岡山藩については、回忌法要による恩赦(法事の赦)とは別に、任官や結婚などによる「祝儀の赦」についても分析を開始し、「法事の赦」と比較したい。 加賀藩ならびに長州藩については、現地で撮影してきた史料の翻刻と分析を引き続き行う予定である。両藩の撮影史料は膨大な量におよび、まだプリントアウトをしていない史料や整理していない史料も多数ある。史料の翻刻作業は来年度までかかるとみこまれる。翻刻と分析を行いつつ、加賀藩の恩赦については藩の刑法との関係も考察しながら、研究発表を行う予定である。なお、翻刻作業と分析の進展状況にあわせ、追加史料の調査が必要な場合には、再度金沢へおもむき、「加越能文庫」で史料収集を行うことになろう。 また幕府が行った恩赦についても、史料収集を行う。具体的には『御仕置例類集』などから恩赦に関する史料を拾い出し、コピーをする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
史料調査(旅費) 5万円物品費(本・USBメモリーなど) 10万円人件費・謝金(史料の翻刻作業) 30万円その他(史料複写代、コピー代など) 5万円
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Research Products
(2 results)