2014 Fiscal Year Annual Research Report
近世瀬戸内の渡海船の研究―その存在形態と商品流通・旅客輸送に果たした役割の解明―
Project/Area Number |
23520846
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
中川 すがね 愛知学院大学, 文学部, 教授 (80227743)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 渡海船 / 築港 / 湊 / 近世 / 瀬戸内 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は最終年度であるため、追加の調査を行うと同時に、成果のとりまとめを行い、報告書『近世の瀬戸内の湊と渡海船』を執筆・刊行した。 その内容は、2014年に発表した論文「江戸前期瀬戸内東部の湊について」(『愛知学院大学文学部紀要』第四三号)の内容を瀬戸内全域に展開し、瀬戸内の浦の状況と渡海船の状況について論じたものである。瀬戸内の浦々の状況を、片浜・川湊・湊・洲・瀨戸などに分類し、六割がなだらかな海岸線である片浜で湊としては不利なこと、しかも片浜・川湊の多くが干潟化の問題を抱えていたことを明らかにした。こうした浅い湊を本拠とする渡海船は200石以下の小型船で、数十石のものも珍しくない。渡海船は瀬戸内を中心にその周辺海域において製塩や瓦製造などの燃料となる薪・松葉、穀物などの買積み活動を行い、年貢米の大坂回漕を担った。また江戸後期の庶民の金毘羅参詣などの客船として季節的に活躍した。近世後期には北前船や伊勢湾の船の参入による瀬戸内の商品流通の活発化を補完した重要な意義があり、海運史研究を渡海船から見直すことが可能である。江戸後期には瀬戸内地域で大廻船の数は減少するが、渡海船は増加した。 また浦の機能は本来こうした渡海船などが潮待・風待のため船掛かりすることが最重要であったが、江戸後期には一定期間船着して商事・交易を行う場所として意識され、築港事業が行われるようになった。この点に関しては今後石積波戸の技術的側面も含めて研究を進めたい。 本報告書には、寛文7年(1667)に行われた幕府の海辺巡見使派遣の関連史料「西国海辺巡見記」掲載の浦をリスト化したものに地誌により渡海船の情報を加えた浦々表と、湊の位置を「海瀕舟行図」上に比定した浦々図を付した。今後の瀬戸内の開運研究に寄与するものと期待している。この浦々表についてはHP上にデータベースとして公開する予定で現在準備を進めている。
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Research Products
(1 results)