2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520847
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
山内 晋次 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (20403024)
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Keywords | 硫黄 / 火薬 / 火器 / 日宋貿易 / 日元貿易 / 日朝貿易 / 日明貿易 / 琉球 |
Research Abstract |
平成24年度は、23年度にごくおおまかな見通しを得ることができた14~16世紀頃の国内的および国際的な硫黄の産出・流通状況について、さらに詳細な歴史像を描いていくために、引き続き関連する史資料の収集を進めた。また、火薬原料としての硫黄の産出・流通状況と密接に関わる、中国から周辺地域への火薬・火器技術の拡散の歴史的状況について、これまでの研究史を検討した。そしてこれらの結果、硫黄の国際流通史において、13世紀末~14世紀前半にユーラシア大陸の広大な範囲を支配下においたモンゴル帝国期の火薬・火器技術の西方への拡散が重要な画期になるのではないか、という仮説を得ることができた。 本研究課題を進めていくにあたっては、硫黄鉱山や流通拠点となる港湾などの現地調査も重要である。そこで、平成24年度においては、11世紀頃以降、日本から中国・朝鮮に輸出された硫黄の主要産であったと推定される、鹿児島県・硫黄島の現地調査を実施した。 本研究課題では、研究成果の国際的な発信ということを重要な柱のひとつとしているが、平成24年度においても、韓国・ソウルで開催された国際学会AAWH(アジア世界史学会)のパネルに参加し、これまでの研究成果の一端を英語で報告した。そして、このときの質疑応答やその後の情報交換を通じて、今後本研究課題を進めるにあたって有益なアドバイスや情報を得ることができた。 また、本研究課題では、その成果の社会的還元の一環として、中学・高校の歴史教育に対する情報の発信を重視している。そこで、平成24年度においても、奈良県・大阪府・神奈川県などの中学・高校地歴教員を対象とする講演会で、本研究課題の成果を発表するとともに、現在の教育現場において十分な連携がおこなわれていない「日本史」科目と「世界史」科目の有機的なつながりを探るこころみなどについても意見交換をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度においては、硫黄の国際的流通に関する画期として、13世紀末~14世紀前半のモンゴル帝国期の火薬・火器技術の西方への拡散に注目したが、この仮説自体は十分に成立しうるものであり、貴重な研究成果であると考えられる。ただ、この仮説をより確実なものとするには、史料や研究情報がいまだ十分ではない。 また、14~16世紀頃の国内的および国際的な硫黄の産出・流通状況に関しても、当初予定したほど網羅的に史料・情報の収集が進んでいない。この点については、日本国内はもちろん世界的にみても先行研究がほとんどない研究課題であり、ほぼ手探りの状態であるため、いたしかたない面はあるが、残りの研究期間においていっそう努力していきたい。 以上のように、史料・情報の収集という面ではやや立ち遅れがみられるが、研究成果の発信という面では、国際学会での報告や中学・高校の地歴教員への講演などを通じて、十分な成果をあげることができたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる平成25年度は、まず、これまで収取してきたデータのなかでとくに不足している、東南アジア・南アジア・西アジア地域の硫黄の産出・流通状況に関する情報の収集に努力していきたい。また、これと併行して、日本を含む東アジア地域の関連史料・情報についても、さらにできる限り網羅的な収集を進めていきたい。さらに、硫黄がその原料として利用される火器の国際的な伝播状況についても、ヨーロッパに関する研究成果などにも視野を広げつつ、より世界史的な動きを探ってみたい。そして、これらのデータの蓄積のうえに、10~16世紀におけるユーラシア規模の硫黄流通の構造とその歴史的変化について、硝石の流通や火薬・火器技術の伝播などの状況を組み込みつつ、より説得力をもつ仮説を提示してみたい。 本研究課題の一環である現地調査に関しては、可能であれば、宋代中国にとって主要な硫黄輸入先のひとつであったと推定されるインドネシア・ジャワ島の硫黄鉱山の調査を実施したいと考えている。 本研究課題の成果の発信という面では、25年10月に韓国・木浦で開催予定の国際ワークショップにおける報告や、同じく8月に札幌で開催予定の北海道の高校地歴教員を対象とする講演会などを通じて、引き続き積極的な成果の発信をおこなっていくつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度における上記のような研究を進めていくにあたっては、さらに多くの文献資料を収集していく必要があり、25年度においても引き続き、国内外の関連図書(電子媒体も含む)の購入を研究費使途の柱のひとつとしたい。 また、上記のようなジャワ島の鉱山調査を含めて、さらにいくつかの現地調査も課題として残されており、さらに研究成果の発信や研究情報の収集のための各種学会への出席も不可欠である。そこで、これらの調査・学会出席のための旅費が、研究費使途のもうひとつの柱となる。 これらのほか、可能であれば、本研究課題のまとめとなる報告書の刊行も考えており、そのための編集・印刷費も必要となる。
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Research Products
(4 results)