2011 Fiscal Year Research-status Report
西国巡礼者に関する基礎的データの整理と検討―一乗寺巡礼札のデータベース化―
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23520848
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
幡鎌 一弘 天理大学, 付置研究所, 教授 (50271424)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 巡礼 / 西国三十三所 / 納札 / 近世史 / 宗教史 / 民俗学 / 一乗寺 / 納経 |
Research Abstract |
巡礼者の多い武蔵国・下総国の状況を知るために、関宿城博物館を訪問して、当該地域の旅日記その他の文献を収集した。当初より、これらの国の巡礼者と利根川水系との関係を考えていたが、その推測はおおむね妥当なものであった。今後、時期・村を厳密に検討して、国単位で把握してきた従来の分析枠組みを改め、生活圏に根差した地域的枠組みで新しい成果が見込めることが明らかになった。 当該地域で巡礼研究を行っている研究者に、2008年度分調査段階で整理した約2000点のデータを提示したが、地元では知られていない17世紀後半のデータもあり、巡礼の歴史の古さ、数の多さに驚かれた。本研究の目的の一つは、データベース作成により、各地で行われている巡礼研究を結ぶ媒体となることだったが、全体の1割程度の情報でもかなりのインパクトがあることがわかった。今後、一乗寺の巡礼札の情報の全貌を提示できれば、各地の巡礼研究に大きく寄与できることが確信できた。 本年度は、昭和50年代の調査時の巡礼札の再調査を予定し、元興寺文化財研究所・国立歴史民俗博物館保管の調書をもとに、一乗寺において、所在の確認・撮影を行った。札と調書の照合に時間がかかったが、3回10日間の調査で、札の撮影と中性紙整理袋への詰め替えを完了した。この作業により、昭和50年代の調査と2008年度の調査に若干の重複部分があることがわかった。さらに、未調査の別置の札を新たに追加し、納経も多く含まれていることを確認した。自筆の訓読観音経、刷物の観音経、般若心経などが奉納されており、近世における庶民信仰、各種経典の受容についても新しい論点が提示できる可能性がうかがえた。 なお幡鎌は、一乗寺が所在する加西市域における文芸史料集を研究協力者の森本桂子と共同して作成し、巡礼者を受け入れた当該加西市域の文化水準の高さを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昭和50年代調査の再調査、未解読の調書作成は、予定通り終了した。 入力作業は、2008年度調査分5000枚と昭和50年代の調書3000枚を予定していたが、昭和50年代調査の撮影に時間がかかったため、2008年度調査分の入力を中心に進めた。2008年度調査分については、予定を上回り、約15000枚の入力が終わった。昭和50年代調査分についても一部は入力が済み、当初の予定通り、2012年度の秋にすべての調書の入力が完了する見込みとなった。入力後の校正については、2008年度調査分の約4000枚が終了したが、予定の7000枚の校正には及ばなかった。これは、入力を前倒しで行ったことによるもので、おおむね順調に作業は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、データの入力と校正を主要な作業と位置付ける。入力については、継続して作業を行い、4月中にすべての入力を依頼し、8月までに作業を完了する。校正についても同様に、10000枚の作業を依頼する。なお、昭和50年代調査分の巡礼札を撮影したところ、調書作成時の札の文字の読み間違いが少なからずあることがわかった。赤外線カメラを利用した今回の調査と技術的な違いがあるので、昭和50年代調査分の校正については、予定以上に時間がかかる可能性があるのが難点である。 巡礼の出身者の多い長門・周防国(山口県)について、地元の研究者と連携し、当該地域に残る巡礼に関する遺物・民俗慣行について現地での調査を企画する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ入力・調書校正作業について、基金の特性を生かし、年度をまたいで研究協力者に作業をお願いした。その分が2012年度に持ち越されたので、使用先はすでに予定されている(2012年5月9日現在、すべて消化されている)。
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Research Products
(1 results)