2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世における「水辺推移帯」の支配と生業をめぐる環境史的研究
Project/Area Number |
23520854
|
Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
橋本 道範 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 専門学芸員 (10344342)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 真二 岡山理科大学, 地球環境科学部, 准教授 (60359271)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 環境史 / 水辺 / 河成 / 生業 / 消費 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、「陸域と水域とが推移することを前提とした支配システムの解明」については、検注によって河川と認定され、税が免除される「河成」に注目し、「播磨国矢野庄河成データベース」を作成してweb上で公開した。これにより、いつ、どの地域で河成が認定されていたのかなどについて基礎的な情報を得ることができるようになった。現在、その分析を進めており、2015年6月28日の歴史地理学会シンポジウム「地域資源の歴史地理」で報告する予定である。
2、「陸域と水域とが推移するという環境そのものを利用した生業のあり方と村落との関わり」については、近江国蒲生郡奥嶋周辺の「水辺」を対象とした論考を核とする『日本中世の環境と村落』(思文閣出版)を公表した。 これは、生業論と消費論とを核にした環境史を構想したもので、「生業の稠密化」論を提起した。「生業の稠密化」論とは、なぜ現在の大字(おおあざ)単位の集落、自治会が自然環境と向き合う中心的な主体となったのかについて、環境史的視点から新たな説を述べたもので、13世紀前後から、与えられた自然環境のなかでより効率よく生産を上げようとする運動が起こり(生業の稠密化)、そのために必要な微細な利害の調整のために、小さなムラ(現在の大字に継承される村落)がより適合的な社会組織として地域社会の主導権を握るのではないかと考えたものである。また、当時首都であった京都の琵琶湖産魚類の消費動向が変化し、それが琵琶湖の漁撈の変化とも連動していたとも考えた。そして、戦後歴史学は、「「近代」になるという「大きな物語」」を描いてきたが、これに対置する「主体である自然と、自然の一部でありながら主体である人間とが、互いに影響しあいながら変化していく」物語を描く必要があると主張した。 なお、この成果の公表にあたっては、日本学術振興会の平成26年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)を得た。
|