2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520857
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
太田 敬子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (40221824)
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Keywords | 異文化交流(ギリシア) / 地中海(エジプト) / 十字軍(エジプト) / 海運史(レバノン) / 境界領域(トルコ) |
Research Abstract |
平成24年度には、前年度収集した研究目的①(東地中海域の一体性を確保していた技術や資源の研究。特に海洋交通と海軍のための技術と資源、地理的情報などについて、キリスト教徒とムスリム双方の史料を包括的に収集・検討する)のためのデータベースを作成し、それらを分析・検討した。その成果は2012年12月15日(土)に早稲田大学西洋史研究会大会シンポジウム「「フロンティア」から見た中世地中海世界」において、「東地中海における陸・海のフロンティア」として口頭発表した。 研究目的②(東地中海の港湾都市史の研究)及び③(当該時期のクレタ島、キプロス島等の島嶼部の歴史の再構築)については、前年度に収集した文献史料や研究書・論文のデータベース化をほぼ完了し、それらの分析・検討を進めた。その一環として、前年度3月に行ったキプロス調査の成果を踏まえて中世キプロス史の再構築を行い、その研究成果は社会的還元という観点から、ワールド知球アカデミー公開講座(2013年1月24日(水)開催:東京日比谷)において、「境域としてのキプロス」という題目で一般に公開した。また本年度3月にはギリシアに海外出張し、アテネにおいて文献収集及びギリシアにおける研究動向の調査を行うと共に、クレタ島においてビザンツ時代からムスリム支配期、十字軍時代、ヴェネツィア支配期にかけての史跡調査を行った。具体的には港湾都市・城塞・城壁などの軍事・防衛施設、教会・修道院等を実地検分したが、時間的制約もあり、イラクリオン・レシムノ・ハニアとその周辺地域(クレタ島中・東部)に焦点を絞った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究課題においては、9世紀から13世紀にかけての地中海を介したムスリムとキリスト教徒の関係史を、従来の研究が十字軍史及び反十字軍のジハード史の文脈に偏って検討されてきたことの反省を踏まえて、より視野を広げて地域研究の観点から東地中海史を再検討することを目標とし、平成24年度には、研究目的①(東地中海域の一体性を確保していた技術や資源の研究、特に海洋交通と海軍のための技術と資源、地理的情報などについて、キリスト教徒とムスリム双方の史料を包括的に収集・検討する)のために作成したデータベースの分析を行い、口頭発表もしくは論文執筆を目指した。その点では早稲田西洋史研究会大会シンポジウムにおいて研究成果の発表を行ったため、当初の目的を達成したといえる。 研究目的②(東地中海の港湾都市史の研究)及び③(当該時期のクレタ島、キプロス島等の島嶼部の歴史の再構築)については、前年度に収集した文献史料や研究書・論文のデータベース化をほぼ完了し、それらの分析と研究を進め、その一部を公開講座において一般に発信することができた。その点では研究の進展状況は一定のレベルに達している。アテネにおける史資料収集及びクレタ島の現地調査でも当初の目的を達成できたと考える。しかしながら、島嶼部の実地検分は平成25年度にも行う必要がある。 研究の進展を妨げているのは中東の政治情勢である。初年度(平成23年度)に予定していたエジプト及びシリアにおけるアラビア語の史料収集とシリア沿岸部の港湾都市の史跡調査は本年度(平成24年度)も政治情勢の混迷により実現することができなかった。エジプトに関しては政治情勢が鎮静化しているので、平成25年度に訪問が可能であると考えるが、シリア情勢は悪化しているため、文献研究に縛らざるを得ない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度からの計画通りに、地域としては東地中海に限定して検討を進める。これは本研究が聖地十字軍に着目することからも合理的といえる。しかしながら、シリア情勢が悪化しているため、今後の研究の推進方法を確定するのは難しい。史料収集と文献研究に関しては、日本における研究推進が主流であるため、当初研究目的に掲げたように以下の3点を推進していく。 ① 東地中海域の一体性を確保していた技術や資源の研究。 ② 当該時期の東地中海の港湾都市史の研究。 ③ 当該時期のクレタ島、キプロス島、ロードス島史の再構築。 時代としては、トゥールーン朝の東地中海進出が始まる9世紀後半から、聖地、及びさらに範囲を広げてキプロス島における十字軍国家の消滅(15世紀)までをも視野に入れる。①と③については、研究計画に則って推進する。特に平成23年度のキプロス調査に続いて24年度のクレタ島調査において研究全体に関わるような大きな成果を得ることができたため、今後の研究においても③の比重を高めていく方針である。②に関しては、現在シリア共和国内の港湾都市や史跡、および研究機関を訪問することは不可能である。そこで平成25年度においてはエジプトから地中海東岸部中・南部(レバノン、イスラエル領域)の港湾都市に重点を置いて調査・研究を進める。また、③については、ロードス島の現地調査及び文献研究を行い、3島の歴史展開を結合させて検討する。最終的には①②③の研究成果を統合し、東地中海史全体の再構築を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)