2011 Fiscal Year Research-status Report
オスマン帝国における教育の連続性と変化(19世紀~20世紀初頭)
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23520859
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
秋葉 淳 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (00375601)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 西アジア・イスラーム史 / オスマン帝国 / 教育史 / 比較・交流史 |
Research Abstract |
初年度に当たる本年度は、1)研究組織の形成、2)研究会の開催と成果の公表、3)資料の収集を中心に行った。 研究協力者を当初予定2名に8名を加え、総勢12名の研究組織を形成し、オスマン帝国を中心とするイスラーム世界の近代における教育と知識の社会史に関する論集を最終的に刊行することを目標に研究を進めることとした。他機関と共催で研究会を12月と3月の二回開催した際に、メンバーによる打ち合わせを行い、今後の方向性などを討議した。 第一回の研究会は、フランス教育史の専門家である前田更子氏を招いてフランスとオスマン帝国におけるベル=ランカスター教授法の受容について比較考察を行った。第二回は、比較教育社会史研究会例会の「イスラームと教育」部会として開催し、オスマン帝国の教育改革と新聞メディアに関する研究報告を、研究協力者の長谷部圭彦と佐々木紳がそれぞれ発表した。研究代表者は、同研究会のシンポジウムで18世紀末から19世紀のオスマン帝国における教育、福祉、慈善についてヨーロッパにおける同時期の展開をふまえつつ検討する報告を行った。他地域の研究者と議論を重ねるなかで、福祉、民間団体、公共性といった視点を取り込むことができたのが重要な成果の一つである。そのほか、研究代表者はオスマン帝国の制定法裁判所制度に関する論考で裁判官の出身や教育について考察を加えた。 資料収集に関しては、研究代表者が7月にイスタンブルに12日間出張し、首相府オスマン文書館とイスラーム研究センターなどで、教育政策や裁判官などの教育歴に関する公文書史料や学校教科書などを収集した。2~3月には連携研究者の小笠原弘幸がトルコとフランスに出張し、首相府オスマン文書館、アタテュルク図書館、イスラーム研究センター、フランス国立図書館、情報学図書館などで、オスマン帝国の教育や歴史学関係の公文書、学校の歴史教科書などを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画は、1)研究体制の確立、2)資料収集、3)実地調査、4)成果の公表であった。このうち、アナトリア南西部の町イブラドゥに赴いて実地調査をすることは、諸事情により出張期間を長くとれなかったため来年度に延期した。その代わり、国内で研究発表会を二度開催することで、初年度の研究成果を公表し、今後の展開に向けて研究を軌道に乗せることができた。研究体制については、当初の予定を超えて総勢12名の共同研究グループを形成することになった。これは、論集の刊行という形で目標を当初より大きく設定したことによる。研究会の開催と二度にわたる資料収集によって、目標に向けて着実に研究を進展させることができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究会を最低3回開催し、研究成果の発表を行う。他地域の専門家も交えた研究会を通じて議論を深め、比較史的な研究を展開させることを計画している。資料収集も継続して行うほか、オスマン帝国時代末期に教育の盛んであった地域に実地調査に赴く。オスマン帝国の地方社会にも視野を広げること、また、ロシア帝国下のムスリム社会やハプスブルク帝国占領下のボスニアとの比較や連関についても検討することが次年度以降の課題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、物品費についてはオスマン帝国史及び比較教育史関連の図書の購入を中心に20万円、旅費はトルコでの実地調査・資料収集のための出張旅費と研究協力者を東京に招聘するための国内旅費として80万円、資料整理等の謝金に5万円、その他資料複写費などに5万円使用することを計画している。
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