2012 Fiscal Year Research-status Report
オスマン帝国における教育の連続性と変化(19世紀~20世紀初頭)
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23520859
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
秋葉 淳 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (00375601)
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Keywords | 西アジア・イスラーム史 / オスマン帝国 / 教育史 / 比較・交流史 |
Research Abstract |
本年度は、1)研究会の開催と成果の発表、2)トルコにおける現地調査、3)資料の調査・収集を中心に研究活動を行った。 他機関との共催で6月、10月、12月の計3回、公開研究会を開催し、連携研究者の小笠原弘幸、並びに、研究協力者7名が研究報告を行った。それぞれの研究報告は、オスマン帝国及びそのアラブ地域、そしてロシア、中央アジア、ハプスブルク帝国占領下ボスニアのムスリムにおける教育、知的伝統、出版などのテーマを、ナショナリズム、国民統合、イスラーム改革思想などの文脈から論じたもので、研究会では比較の観点から議論を深めることができた。最終年度には、これまでの研究会をふまえて論集の刊行を予定しており、3回の研究会を通じてそのための準備作業が進められた。また、研究代表者は、タンズィマート改革以前のオスマン帝国における女子教育に関する研究発表を11月に日本オリエント学会の年次大会で行い、女子教育における連続・非連続の問題について論じた。 8月には、研究代表者がトルコに出張し、オスマン帝国時代に多くの裁判官や官僚を輩出した、トルコ南部の町イブラドゥとその近隣の村ギョデネを調査した。これらに近いオルマナという村と、この地域と歴史的に結びつきの強いアランヤ市も訪問した。イブラドゥ及びギョデネでは、かつてのオスマン裁判官の旧家を見学したほか、彼らの子孫にあたる人たちから聞き取り調査をしたほか、郷土史家たちと情報を交換した。また、地理的環境についても実地で観察することができた。 イスタンブルにおいては、首相府オスマン文書館とイスラーム研究センター附属図書館で教育政策や、イブラドゥ、ギョデネの社会状況に関する史資料を調査、収集した。そのほか、国内では、国学院大学図書館所蔵の英国内外学校協会の報告書のマイクロフィッシュを閲覧し、ランカスター式教授法のオスマン帝国への伝播に関する資料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は、資料収集、実地調査、成果の発表を計画していた。これらはどれも、おおむね達成できたと言える。このうち、成果の発表については、本科研の研究会を比較教育社会史研究会例会の部会として開催することで、他地域の研究者との比較研究を実現することができた。また、オスマン帝国の女子教育について、新史料によって新たな成果を得た。 本研究の目的は、旧来のイスラーム教育機関と改革後の新式学校双方を対象にして、教育の中身とその受け手について連続性と変化を明らかにするというものであったが、これまでの研究成果は十分この目的にかなっているといえる。10名の研究協力者を得て共同研究を行うことによって、この研究目的に関して、多方面からのアプローチが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、論集の刊行など成果の公表に向けて、研究のまとめの段階に入る。資料についてもまだ補充する必要があるので、トルコの文書館などでの資料収集も継続して行うほか、オスマン帝国時代末期に教育の盛んであった地域の実地調査の継続も検討する。論集の刊行及び論文の発表のために、資料の分析、論文の執筆、編集等の作業を進める。また、学会等での研究発表を数回程度行うほか、研究会も数回開催して成果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、オスマン帝国史及び比較教育史関連の図書の購入と、アルバイトを使ったデータ整理のために必要なノートパソコンの購入などのために30万円、旅費はトルコでの実地調査・資料収集と海外での研究成果発表のための出張旅費などとして80万円、資料整理等の謝金に5万円、その他資料複写費などに5万円支出することを計画している。
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