2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520864
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
富澤 芳亜 島根大学, 教育学部, 教授 (90284009)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 中国 / 経済史 / 東洋史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代中国工業の技術的基礎を、1910~50年代を期間として、教育機関による技術者養成と、こうした技術者の企業内での活動を通して明らかにするものである。そのため初年度においては、以下の三点について実施することとした。それぞれについて成果を記すことにする。 (1)1910~50年代の中国経済史を、産業技術史の観点から読み直し情報の整理を行う。これについては、「近代中国の紡織業史」『近きに在りて』第59号として公刊するとともに、「在日本的中国紡織業史研究的成果與課題」として「歴史上的民衆與社会」国際学術研討会(台湾・東海大学歴史系)において中国語で報告した。 (2)国内の研究機関における文献・資料の渉猟、収集を行った後に、中国の図書館・文書館において文献・資料の渉猟、収集を徹底して行い、必要な情報の整理・分析を行う。これについては、本年2~3月に上海図書館にて調査をおこなった。 (3)近代中国工業の技術的基礎について、幾つかの作業仮説を設定する。この仮説の妥当性に対して第三者が客観的評価を下すために、所属する研究会などにおいて報告を行う。これについては、仮説のいくつかを『近代中国を生きた日系企業』大阪大学出版会として公刊するとともに、「民国初期の企業関連法整備と日系企業」辛亥革命百周年記念東京会議(東京大学)として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで史料面や、調査の際の人的ネットワーク面などで充分な準備をしてきたこともあり、順調に進捗している。 情報整理の面では、これを「近代中国の紡織業史」『近きに在りて』第59号として公刊できただけではなく、「在日本的中国紡織業史研究的成果與課題」として「歴史上的民衆與社会」国際学術研討会(台湾・東海大学歴史系)において中国語で報告できた。またこれについても中国語で公刊されることになっている。 資料収集の面では、本年度は様々な事情から時間の確保が困難となり、国内研究機関所蔵の資料は、勤務先の図書館を通しての収集となったが、着実な成果をあげることができた。また短時間ではあったが、上海図書館での調査は、同館における貴重なデータベースの完成を知ることができた。 また作業仮説の設定と、その妥当性への第三者評価については、『近代中国を生きた日系企業』大阪大学出版会に関しては『エコノミスト』第90巻第10号において、橘川武郎氏の書評を賜ることができた。また「民国初期の企業関連法整備と日系企業」辛亥革命百周年記念東京会議(東京大学)についても、多くのご意見を賜ることができ、これを次年度の研究計画に反映させる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、勤務先の事情から時間の確保が困難となり、国内の研究機関での調査を充分に行うことができず、これにより次年度使用額が生ずることとなった。 平成24年度においては、本年度の成果を基礎に(1)国内、海外において文献・資料の渉猟、収集を継続して行う。(2)資料収集や研究会での議論をもとに、作業仮説を検証する。(3)こうした成果を学会報告、雑誌論文、学術書の公刊などを通して、広く社会へと発信することにする。 本年度と平成24年度の研究費を使用し、国内外での資料調査を重点的におこなう。特に上海図書館では、これまで破損などの理由から閲覧を不許可としていた文献の多くがデジタル化され、閲覧できるようになっており、多くの成果が得られた。また上海図書館は、中国全土の図書館に所蔵されている民国期雑誌記事のデーターベース化も終えており、これを利用することにより更に大きな成果を期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、勤務先の島根大学教育学部において共生社会教育講座主任に就任するなどの様々な要因が重なったために、予定していた夏期休業中の資料調査の海外渡航を断念せざるを得ず、そのために残額が生ずることとなった。 そのため平成24年度の研究費と合わせて、上述の上海図書館のデータベースについての実地調査を引き続き実施する。また近年、中国では中華民国期の貴重な統計類のリプリントや業界誌のマイクロフィルム化が相次いでおり、24年度においてもこの渉猟、収集と分析につとめる。また国内研究機関所蔵の史料については、勤務先の図書館を通して収集につとめるとともに、大阪大学附属図書館の綿業協会資料など重要資料については実地調査を行うこととする。
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Research Products
(5 results)