2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520864
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
富澤 芳亜 島根大学, 教育学部, 教授 (90284009)
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Keywords | 国際情報交換 / 多国籍 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代中国工業の技術的基礎を、1910年代~50年代を期間として、教育機関による技術者養成と、こうした技術者の企業内での活動を通して明らかにするものである。そのため第二年度においては、以下の三点について実施することとした。それぞれについて成果を記すことにする。 ①1910~50年代の中国経済史を産業技術史の観点から読み直し情報の整理を行う、これについては、富澤芳亜「紡織業史」(久保亨編『中国経済史入門』東京大学出版会、47~60頁、2012年9月)として公刊することができた。 ②国内の研究機関における文献・資料の収集をおこなった後に、中国の図書館・文書館において文献・資料の収集を徹底して行い、必要な情報の整理・分析を行う。これについては、東洋文庫、東京大学東洋文化研究所、京都大学人文科学研究所で継続的に調査を行うとともに、2012年9月には東京大学柏図書館、2013年3月には東京工業大学百年記念館で関連資料の調査を集中的に行った。また2012年8月24日~9月4日には上海図書館、上海市档案館での調査を行った。 ③近代中国工業の技術的基礎について、幾つかの作業仮説を設定する。この仮説の妥当性について第三者が客観的評価を下すために、所属する研究会などにおいて報告を行う、これについては、仮説のいくつかを富澤芳亜「1930年代の中国における綿紡織工場の設備導入について」(『広島東洋史学報』第15・16合併号、11~22頁、2011年12月、実際の発行は2013年6月、実際の発行は2013年6月)として公刊するとともに、京都大学人文科学研究所「近現代中国における社会経済制度の再編」共同研究班(班長:村上 衛)において、2013年2月22日に「1920、30年代の厳家経営の紡織工場について」を報告し、渡辺純子京都大学教授をはじめとする参加者から貴重なコメントを賜った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで史料面や人的ネットワークの面で充分な準備をしてきたこともあり、順調に進捗している。 情報整理の面では、「紡織業史」(久保亨編『中国経済史入門』東京大学出版会、47~60頁、2012年9月)として公刊できただけではなく、中国語での公刊の準備を進めている。 資料収集・整理の面では、昨年度の上海図書館での調査の際に識った、同館の貴重なデータベースを利用して、常州大成紡織染公司の社内誌である『励進月刊』などの貴重な資料を蒐集できた。また国内においても、東京大学柏図書館、東京工業大学百年記念館で貴重な関連資料の収集をなすことができた。 また作業仮説の設定と、その妥当性についての第三者評価については、京都大学人文科学研究所「近現代中国における社会経済制度の再編」共同研究班(班長:村上 衛)における2013年2月22日の「1920、30年代の厳家経営の紡織工場について」報告において、渡辺純子京都大学教授をはじめとする参加者から貴重なコメントを賜ることができ、これを次年度の研究に反映させる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、勤務校の事情から時間の確保が困難となり、国内研究機関での調査を充分に行うことができず、これにより次年度使用額が発生することになった。 平成25年度においては、本年度の成果を基礎に①国内、海外において文献・資料の収集を継続して行う。②資料収集や研究会での議論をもとに、作業仮説を検証する。③こうした成果を学会報告、雑誌論文、学術書の公刊などを通して、広く社会へと発信することにする。 本年度と平成25年度の研究費を使用し、国内外での資料調査を重点的におこなう。特に上海図書館では、これまで破損などの理由から閲覧を不許可としていた文献の多くがデジタル化され、閲覧できるようになっており、多くの成果が得られた。また上海図書館は、中国全土の図書館に所蔵されている民国期雑誌記事のデータベース化も終えており、これを利用することで更に大きな成果を期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度も、勤務先の島根大学教育学部において共生社会教育講座主任に留任するなど様々な要因が重なったため、国内外における資料調査の時間の確保が困難となり、そのために残額が生ずることになった。 そのため平成25年度の研究費と合わせて、上述の上海図書館のデータベースについての実地調査を引き続き実施する。近年、中国で刊行が相次いでいる中華民国期の統計類のリプリント資料などの収集と分析を進める。また国内においては、東洋文庫に導入された『申報』、京都大学人文科学研究所の大成民国期データベースなどの、デジタル資料を積極的に利用するとともに、大阪大学附属図書館の綿業協会資料についての調査もおこないたい。
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