2014 Fiscal Year Annual Research Report
清朝中期満洲地域社会の研究:旗人・民人間の社会関係
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23520866
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
荒武 達朗 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (60314829)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 満洲 / 旗人 / 民人 / 移住 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は成果をまとめる作業をおこなった。まず満洲地域の文史資料、碑文資料(遼陽地区)、地方志、档案史料から郷村組織の首長についてのデータを収集し、旗人村落と民人村落の差異に当てはめて分析した。この作業により遼寧省中部に旗人村落の集中がみられるが、この内部に民人が入り込むことによって民人関係の役職が増加していることが分かった。具体的に言えば、19世紀前半、本来は「守堡」と呼ばれる旗人村落の首長が地域社会の最下層のまとめ役であったが、ここに「郷約」と呼ばれる民人系統の役職が増えていったことが明らかになった。また遼寧省西部では保甲制度、吉林などのフロンティアではより大きな権限を持った「郷地」、つまり「郷約」と「地方」の合称、という複合的役割を担う首長が出現していた。旗人、民人という分類はその所属する社会の違いに基づく属人主義的編成原理である。対して19世紀初頭には、守堡という旗人系統、郷約という民人系統にかかわらず、その管轄地域内の旗人、民人を問わず住民を統御するという性格へと変容している。すなわち属人主義から属地主義への移行を見出すことが出来るのである。これらの成果は、学会発表「嘉慶年間満洲地域郷村社会の首長:郷約、保長、守堡」ならびに論考「嘉慶年間南満洲地域の郷村統治に関する史料」に結実した。 続いて副次的な成果として、史料を収集する中で東亜同文書院の編纂した大旅行誌を基にして近代満洲の民族関係に関する考察を行うことが出来た。それらは学会発表「東亜同文書院大旅行誌から見た満洲の日本人」、論考「東亜同文書院生の見た満洲の娘子軍」という成果となった。
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Research Products
(5 results)