2011 Fiscal Year Research-status Report
歴史・宗教文献を利用した預言者ムハンマド時代の総合的研究
Project/Area Number |
23520879
|
Research Institution | Tokyo Jogakkan College |
Principal Investigator |
医王 秀行 東京女学館大学, 国際関係学部, 教授 (20269426)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | イスラム / アラブ / ムハンマド |
Research Abstract |
イブン・イスハーク著イブン・ヒシャーム編註、後藤明、医王秀行、高田康一、高野太輔訳『預言者ムハンマド伝3』『預言者ムハンマド伝4』岩波書店を出版した。第四巻では、訳者解説のうち、解説1『預言者ムハンマド伝』解題を担当した。また、『預言者ムハンマドとアラブ社会 信仰・暦・巡礼・交易・税からイスラム化の時代を読み解く』福村出版、2012年2月、を出版した。預言者ムハンマドが新たに打ち立てたイスラムという価値体系はアラブ社会に大きな変革をもたらした。イスラム化以降の信仰のあり方は、ジャーヒリーヤ時代のそれに比べると、「簡素化」、「純化」したものとなった。メッカのカアバ神殿は、唯一神アッラー崇拝の中心に位置付けられ、神殿内部から雑多な偶像は一掃された。アラビア半島各地の偶像もすべて廃棄された。各地の神殿や偶像神に付随した神官、占い師、巫者といった社会階層もその役目を終えた。武勇、寛大さ、客人のもてなし、といった部族精神を賛美した詩人よりも、コーラン詠み手が尊敬されるようになっていった。部族ごとの雑多な習慣、宗教慣行、迷信の類も捨てられるか、イスラム的なものへと統合されていった。イスラムは、大きな文化改革であり、社会改革であったといえるであろう。ムハンマドのメッカ征服後、瞬く間にアラブがイスラムに帰順した事実は、政治、社会的、あるいは文化的一体性が半島に存在していた証である。イスラムの大征服も、ひとたび求心力を得てまとまったアラブの軍事面における発露にすぎない。交易圏は広く拡大され、それと同度にイスラムの宗教、文化も周辺地域に大いに広まった。預言者ムハンマドがもたらしたイスラムは、その信仰の広がりと同時に、前イスラム時代から蓄積されていた豊かなアラブ社会を、軍事面、交易面、文化面などさまざまな形で、周辺社会に知らしめることに寄与した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に述べたように、イブン・イスハーク著イブン・ヒシャーム編註、後藤明、医王秀行、高田康一、高野太輔訳『預言者ムハンマド伝3』『預言者ムハンマド伝4』岩波書店を出版、また、単著として『預言者ムハンマドとアラブ社会 信仰・暦・巡礼・交易・税からイスラム化の時代を読み解く』福村出版、2012年2月、を出版した。従来の預言者ムハンマドや初期イスラム史に関する研究の成果を充分に、組み込むことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
アラビア語の関連史料を収集し、史料の読解を進める。欧米の専門論文を蓄積し、研究動向の把握に努める。日本の雑誌に専門論文を投稿するのみならず、海外の学術雑誌にも投稿することで、海外に日本のイスラム研究の水準を知らしめ、国際的な学術交流に結び付くものと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アラビア語史料の収集。欧米専門書の購入。研究論文の英文への翻訳。海外文献の日本語への翻訳。資料の製本。
|