2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520884
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
伍 躍 大阪経済法科大学, 教養部, 教授 (60351681)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 東洋史 / 中国史 / 科挙 / 官僚 / 社会史 / 同官録 / 書誌 |
Research Abstract |
本研究の意義は、これまでほとんど利用されていない前近代中国の官僚の個人履歴集である「同官録」を収集して目録を作成し、その内容をデータベース化することを通じて、前近代中国社会における官僚社会の実態、つまり官僚たちを取り巻く社会環境および官僚の登用や昇進などを含む人間の社会移動(social mobility)の実態を明らかにすることにある。 本研究の初年度にあたる平成23年度には、海外、とりわけ中国の上海、北京、成都、広州、香港の大学図書館などを中心に前近代中国の官僚の個人履歴集である「同官録」の所蔵状況を調査し、資料性の高いと認める数点の「同官録」を写真複写による収集を行った。 以上で収集してきた一点の「同官録」、即ち『浙江蘇郡同官録』の履歴資料を解析し、のべ160余名の蘇州府出身現職官僚や候補官僚の出身県籍、出身資格、年齢、ポスト、任官資格の取得方法、家族(曽祖父、祖父、父、妻の父)の出身資格と任官資格、および家族構成のデータを得ることができた。これらのデータをもとに、の科挙・捐納と社会移動の視点から研究を行った。この研究を通じて、上記ののべ160余名の官僚のうち、(1)約82%の者の祖先は生員などといった出身資格を持っていないこと、(2)約95%の者は監生などといった任官資格を得るために捐納制度を利用したこと、ということが分かった。 上記の研究成果は、2011年9月に中国南京大学が主催する国際シンポジウムで報告したうえ、論文をまとめ2012年1月に公刊した。 こうした研究を通じて、19世紀末の中国社会において、人々は、出世のためにどのように国家の制度を選択し利用していたのかを知ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画においては、平成23年度の目標は、まず「(同官録の)目録作成に必要なデータを収集する」、ということにある。この目標は、ほぼ達成していると考えている。主な理由は2点ある。 (1)出版された国内と海外の図書館蔵書目録を利用して、主要図書館の所蔵情報を概ね把握することができたうえ、その図書館に赴き現物の確認作業をした。こうした作業を通じて、公刊蔵書目録の登録上の不備や登録漏れなどの状況を把握し、訪問先の図書館の「同官録」の所蔵状況をほぼ的確に把握することができた。 (2)初歩的とは言え、試験的にデータの解析作業を行い、先に述べた研究成果を得ることができた。 本研究が目指している「同官録」に記録されている官僚個人履歴に含まれる種々の情報を解析し、前近代中国における官僚登用と官僚昇進の実態をルート別((1)科挙制度=「正途」、(2)捐納制度=「雑途」、(3)「正途」と「雑途」の併用)に明らかにする、ということからすれば、初歩的なものとはいえ、当初の目的をほぼ達成したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、前年度の継続として、「同官録」について引き続き調査収集する一方、履歴データの解析と整理を行う、ことを考えている。詳細な研究計画と方法は以下の通りである。 (1)資料調査。前年度に続き、国内外各主要図書館に赴き、「同官録」の所蔵状況を調査し、重要なものを複写し収集する。旅費や資料複写費はこのために用いる。現在、予定しているのは以下の図書館である。国内:国立国会図書館、東洋文庫、国立公文書館(内閣文庫)、ほか。国外:中華人民共和国上海図書館、中華人民共和国南京図書館、アメリカ合衆国議会図書館(Library of Congress)、アメリカ合衆国ハーバード大学燕京図書館(Harvard-Yenching Library)、ほか (2)資料の解析整理。それは、官僚個人の出身資格および昇進資格の取得経緯、および官僚の家族構成と姻戚関係を中心に行いたい。 (3)研究結果の発表も考えたい。 以上
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に交付された研究費1,500,000のうち、執行したのは1,397,823円で、102,177円の未使用分は発生した。その主な原因は二つがある。 (1)平成24年3月の海外調査の際に購入した図書の一部は、船便の関係で平成23年度内に到着することができなくて、清算できなかったこと。 (2)広東省省立中山図書館は今年の3月、内部の事情により漢籍の閲覧を突然中止したため、本来予定していた書物の現物調査と収集ができなかったこと。 平成24年度中、交付予定額の1,400,000円(直接経費)と上記未使用分の102,177円、計1,502,177円の使用計画は以下です。 部品費180,000円、調査旅費700,000円、人件費・謝金220,000円、その他(資料複写費・資料購入費など)402,177円。 以上。
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Research Products
(3 results)