2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520893
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
安成 英樹 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (60239770)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フランス / 宮廷 / 官職売買制度 / 国制史 |
Research Abstract |
本研究は、フランス近世社会において独特の存在感をもつ宮廷社会を分析対象とし、プロソポグラフィーの手法を使って、そこに実際に起居した宮廷役人の集団的特質、社会的政治的な機能について迫ろうとするものである。宮廷はしばしば王権の「虚飾」として、空疎で煩瑣な儀礼を繰り返すに過ぎないと論じられてきた。しかしながら、フランス絶対王政の統治構造を研究する上で、あらためてこれを権威と権力の両輪から捉えることが喫緊の課題となっている。そうした研究の状況に鑑みて、両者の結節点としてフランス宮廷が果たした役割はきわめて重要であり、にもかかわらずその実態はほとんど明らかになっていない。したがって、この複雑極まりない宮廷を総合的に(数量的にかつ質的にも)分析することで、その再評価を試みるものである。 本研究の初年度である平成23年度は、まずもってフランス宮廷に関連する諸史料、研究文献の収集を可能な限り網羅的に行った。その上で宮廷の各部署における具体的な人員配置、およびその個々人のデータ収集をスタートさせている。彼らがどういう出自であり、どういった経歴を経て宮廷での地位(官職)を獲得(購入)したのかといったキャリアパスの析出、職務内容、在任期間、資産状態、その後の昇進経路(その有無)、有力者との人的ネットワーク、婚姻関係、パトロン=クライアント関係などについて、えられるかぎりの情報を抽出する作業を進めている。また、ルイ14世に侍従として長く仕えたボンタンBontempsに関するMathieu Da Vinhaの最新の研究書、Alexandre Bontemps: Premier valet de chambre de Louis XIVなどから、多くの有益な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、すでに述べたように基礎的な文献収集とそこからの宮廷役人の各種データの抽出を重点的に行った。ただし、彼らの出自、経歴、官職購入(あるいは譲渡、世襲)の具体的様相、職務内容、在任期間、資産状態、その後の昇進・転身経路(その有無)、有力者との人的ネットワーク、婚姻関係、パトロン=クライアント関係などについて、できる限りの情報を抽出する作業を進めている。具体的には、各種研究文献やフランス国立図書館(BN)の電子図書館ガリカ所収の、当時の『王国年鑑』Almanach royalといった史料を利用することで、多くのデータを得ることができた。ただし、宮廷役人については他の司法、行政官僚に比べると、判明する件数自体が決して多くなく、得られるデータも断片的かつ不均質な情報が多いため、プロソポグラフィーの手法である統計的、計量的な分析を行うほどには収集するにいたっていない。したがって、今年度もさらなる資史料の博捜、データ収集が課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
フランス宮廷の構造は、依然として全貌を掴むにはいたっておらず、したがって平成24年度においても、前年度に引き続いてフランスの宮廷制度・組織、その人員に関する諸史料を収集し、分析する。また同時に当時の宮廷役人が書き残した回想録、日記などを重点的な収集対象とする。こうした日記類は実際の歴史研究でまだ十全に用いられておらず、これらから宮廷の日常的な生活に関する情報をさまざまに引き出せると考えている。また、これまでに収集済みの資料や文献の検討を進め、宮廷の実態解明作業を進めていく。 さらには、フランス国立図書館(BN)や古文書館(AN)の所蔵する資史料、また国立図書館の電子図書館ガリカ(Galica)に収録されている諸史料(未刊行ないし入手困難なものについて)を積極的に調査し、活用したい。さらにフランス宮廷のみならず、同時代の他国の宮廷、とくにイングランドやドイツ(神聖ローマ帝国や諸領邦)の宮廷に関する文献を収集し、フランスのそれと比較することで、ヨーロッパの宮廷構造の多角的分析を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の支出としては、前年に引き続きフランス、さらにはその他の国の宮廷や国制に関する諸文献・史料の購入に充てられる。その際に宮廷生活の実態を知る有効な手がかりとして、当時の宮廷役人が書き残した回想録、日記などを重点的に収集対象とすることを想定している。またフランス国立図書館(BN)や古文書館(AN)の所蔵する資史料、また国立図書館の電子図書館ガリカ(Galica)に収録されている諸史料を積極的に調査、活用したい。そのためにパリ近郊への史料調査旅行を計画しており、旅費をこれに充てる。また、収集した資史料の整理、また宮廷役人のデータ入力、整理の作業を大学院生等に委託し、これに謝金を支出する。なお、平成23年度研究費未使用額(2万強)は、上記の資史料購入費等として合わせて使用する予定である。
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Research Products
(2 results)