2011 Fiscal Year Research-status Report
『レヴォルト・ロジック』期前後のジャック・ランシエール
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23520894
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
福島 知己 一橋大学, 社会科学古典資料センター, 助手 (30377064)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 労働運動史 / 現代史 / 一九世紀史 / 歴史理論 / フランス |
Research Abstract |
平成23年度は、ジャック・ランシエールがジャン・ボレイユやジュヌヴィエーヴ・フレースらと共に結成した研究グループの機関誌である『レヴォルト・ロジック』(1975年創刊)およびランシエールの著作『プロレタリアたちの夜』の内容分析を行った。またこれらの著作にとどまらずランシエールに関する全般的な研究状況を吟味した。さらに、国内外の研究者へのインタビューを通じて、当時の状況への理解を深めた。 これらの作業によって以下のことを確認できた。第1に、(他の時期と同様)『レヴォルト・ロジック』期のランシエールの思索は多岐にわたり、ほとんど関心の赴くままといった印象さえ受けるが、あえておおまかな分類を試みるなら、(1)19世紀の労働者に関する歴史記述、(2)アナール派を中心とする歴史学への批判、(3)ピエール・ブルデューの社会学への批判、という3つに分類できること。ランシエールは『レヴォルト・ロジック』の活動と並行して、各地の文書館や図書館を渉猟した。後年それぞれまとめられることになるランシエールの多様な関心は、雑誌記事や文書資料等をもとにこの時期に行った調査の果実である。 第2に、逆説的な言い方になるが、個々の著作に含まれている思索は、それぞれに分類できるものではなく、相互に関連していること。それまで専門的には哲学の研究を進めていたランシエールが歴史学研究を開始したのは、『アルチュセールの教え』の出版に繋がるランシエール本人の思索の変化に加えて、当時の時代状況によるところも大きい。内的かつ外的な要因をもとにして形成された一種の知的衝動が、具体的にはこれらの形態において表出したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に行う予定になっていた研究状況の整理、テキスト分析および国内外の研究者へのインタビューは、おおむね順調に進展している。 テキスト分析については、『レヴォルト・ロジック』および『プロレタリアたちの夜』の内容分析を継続して行っている。 またランシエールらへのインタビューによって今後の研究の進め方について有益な示唆を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
『レヴォルト・ロジック』および『プロレタリアたちの夜』の内容分析を継続して行うと共に、『労働の言葉』『哲学者とその貧民たち』など前後して出版された著作との比較を試みる。また、ゴニーやジャコトに関する著作等、ランシエールの思想史的な著作とも比較を進める。 国内外の研究者へのインタビューを通じて、当時『レヴォルト・ロジック』に寄稿していた人々の問題意識がどのようなものであったか、またどのような点で相互に相違があったかを把握する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度にフランスへの調査旅行を行う。調査旅行において、ランシエールの著作で言及されている資料について、文書館や図書館で内容を確認する。また『レヴォルト・ロジック』に寄稿していた研究者にインタビューを行う。 旅費および図書費が想定を下回ったために次年度使用額が生じたが、平成24年度に行う予定にしている稀覯資料の調査を充実させる経費としたい。
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