2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520896
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
皆川 卓 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90456492)
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Keywords | 帝国イタリア / 国際的封建制 / 帝国宮内法院 / 皇帝総代理 / 宮廷ヘゲモニー / 占領統治 / 社会的流動性 / 帝国的システム |
Research Abstract |
平成24年度まで実施した、帝国イタリア諸国とその封主権およびその代理権力が集中するミラノ宮廷のプロソポグラフィに関する調査によって、帝国イタリア諸国の君主・エリートとミラノのエリートは、水平的に人脈を持つのではなく、むしろヨーロッパ諸国家体系が主権国家併存体制へと移行する17世紀後半から、家門単位で後者が前者に入れ替わることが判明した。したがって当初の予測であった「両エリートのネットワークによって維持された帝国イタリア諸国の保全」という構想は、「ハプスブルク家の主権的権力を背景にしたミラノ法曹エリートによる、国際的封建制を通じた緩やかな統合を志向する帝国イタリア諸国のエリートの排除」という構想に修正する必要が生じた。つまり西欧で主権国家併存体制が生起する17世紀末を境にして、帝国イタリア諸国でも制度的・人的両面において、従来の自立が困難になり、外交権を封主である神聖ローマ皇帝に吸収され、主権国家併存体制を構成する一アクターの従属団体と化したということである。従って18世紀の帝国イタリアは、主権国家併存体制とは別個の国家間関係モデルというよりも、国家間の従属体系、つまり帝国的結合に近い。そこで平成25年度は、17世紀全体を見渡した見直しに重点を移して対象に関する史料収集・解読を行った。その結果、帝国イタリアで人的ネットワークが直接政治的影響力を持ったのは1630年代までであること、それ以降、旧来の集団は親族集団よりも伺候する宮廷の方針に従うのが一般的になり、政治的に分断される傾向にあったこと、その背景には、16世紀以来帝国イタリア諸国の執行権を担っていたミラノ公=スペイン王に代わり、裁判権者に留まっていた神聖ローマ皇帝自身が軍隊を駐留させ、軍税を徴収し、それを梃子に裁判・立法に権限を拡大していく中で、ミラノの法曹官僚がその担い手として従来の集団の役目を引き継いだことが明らかになった。
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