2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520897
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加納 修 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (90376517)
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Keywords | 西洋中世史 / ゲルマン部族国家 / ローマ帝国 |
Research Abstract |
本年度は、前年度までに行った研究の総括を目指して研究を行った。個別的な成果としては、学会シンポジウム報告を一回行い、雑誌論文を1本公表した。2013年6月13日に開催された西洋中世学会シンポジウム「中世のなかのローマ」において、「ローマ法にしたがって――中世初期ヨーロッパにおけるローマ法観念と法実践――」と題して、ゲルマン諸国家におけるローマ法の受容・変容プロセスについて報告した。とりわけフランク王国においては早くからローマ法が成文規範としてではなく慣習として継承されたことを明らかにし、ゲルマン諸国家における統治と法との関係を比較史的に解明する手がかりを得た。他方、Hersetec第7号に発表した「メロヴィング朝の結婚命令書の消滅をめぐって」においては、6世紀のメロヴィング王権が中下層民を優遇するべく、彼らと有力者の娘や裕福な寡婦との結婚を命じていたことを突き止め、この時期には下層出身の宮廷人を起用していたが、7世紀にはそうした政策が意義を失ったことを明らかにした。メロヴィング王国の宮廷における人材起用方法は、かくして7世紀に大きな転換を迎えるのだが、6世紀における中下層民の優遇は、5世紀のヴァンダル王の宮廷におけるそれと類似しており、ともにローマ系貴族層の強大な権力を掘り崩す、もしくは抑制する目的を持っていたものと推測される。得られるデータの都合上、西ゴート王国、東ゴート王国、ブルグンド王国の状況と比較することはできなかったが、これらの王国でも「王の奴隷」のような存在が執行吏の任務を委ねられていた事実から、貴族層以外の人々を積極的に用いる理由があったと考えられる。こうした人々は、名前すら史料で挙げられないことが多く、これまでの研究で注目されてこなかったが、本論考によって、ゲルマン諸国家を新たな角度から比較して研究するための突破口が開かれたのではなかろうか。
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Research Products
(3 results)