2011 Fiscal Year Research-status Report
中世イタリア都市支配層の「貴族」アイデンティティ―14世紀ヴェネツィアを中心に
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23520898
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高田 京比子 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (40283668)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 貴族(イタリア) |
Research Abstract |
ヴェネツィア・エリート層の貴族としてのアイデンティティのよりどころを探るために利用可能な史料として、年代記のあとにしばしば付された「貴族の家リスト」がある。本年度は、このような家リストがどの程度残っているのか、これらの家リストを含む年代記と含まない年代記にはどのような違いがあるのかをまず検討した。その結果、家リストを含む年代記は、ドリ・レーンのいうところの「情報提供型年代記」であり、見出し文字が大きかったり、彩色が施されていたり、元首の治世ごとに話が分割されていたりと、必要な情報が取り出しやすいように工夫された形態になっていることがわかった。筆者はじっさい、ヴェネツィアのマルチャーナ図書館にて、いくつかの写本を実際に眼にし、これらの情報型年代記の特徴を確認することができた。また、ドリ・レーンともコンタクトをとり、年代記やヴェネツィア貴族の「高貴さの記憶」についてさまざまな情報を得ることができた。なお、貴族の家についての情報が豊富で、異本も存在するピエトロ・ジュスティニアンの年代記をマルチャーナ図書館からは画像で、フランス国立図書館からはPDFでとりよせ、内容についての細かい異動を検討中である。同時に、本年度は、貴族の家のあり方とヴェネツィア国家の関係を考えるために、嫁資の問題を取り上げた。嫁資が家のステイタスやエリートの家同士の社会的ネットワークの構築に役立っているのみならず、貴族の家の富の一部を国家の財政に役立てる仕組みが12世紀~13世紀にかけてととのっていったことを論証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、貴族アイデンティティの研究を進める途上で、嫁資の問題をより深く掘り下げる必要があると気づき、貴族の家と嫁資とヴェネツィア国家の関係について論考をまとめた。そのため、肝心の年代記の研究の方は、ヴェネツィアでの史料調査、海外の専門家との意見交換のみに終わってしまい、実質的な分析はあまり進められなかった。また13世紀のヴェネツィア・エリート層のアイデンティティについてもまとめることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、13世紀のヴェネツィア・エリート層のアイデンティティについて、商人文化と騎士文化がどのようにからみあっていたか、研究史と史料に基づいてまとめる。そのうえで、すでに手に入れた年代記史料を詳細に検討することによって、年代記の貴族リストに見られるヴェネツィア・エリートの特権階級としての意識の源泉がどこにあるのかということを探っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
リーズの国際中世学会でイタリア中世史のラウンド・テーブルがあるので、それに参加するために30万、イタリアでの海外調査に40万を使用する。残りのお金で、中世イタリア史関係の書籍を購入する。
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