2011 Fiscal Year Research-status Report
フランス絶対王政の統治構造再考:官僚制、治安、裁判
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23520902
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
正本 忍 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (60238897)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フランス / 警察 / 裁判 / 官僚制 / ノルマンディ / 売官制 / マレショーセ |
Research Abstract |
本研究は、アンシアン・レジーム期の国王の裁判所かつ警察であったマレショーセを主たる検討対象として、フランス絶対王政の統治構造を官僚制、治安、裁判の側面から再検討することを目的とする。本年度の作業は、(1)フランスの古文書館における関係史料の収集、(2)史料の読解・分析、(3)論文執筆の3つが予定された。その成果は以下の通りである。 (1)については、8月~9月に約3週間渡仏し、国立古文書館、国防省歴史課古文書館、ピュイ=ドゥ=ドーム県古文書館で史料の収集に努めた。その一部は執筆した論文と学会報告((3)参照)で活用されている。ただし、予定していたセーヌ=マリティーム県古文書館での史料収集は、同館が移転のため7月から閉館となり、かなわなかった。なお、この渡欧中にシチリアで開催されていた身分制議会史の国際学会に参加し、研究の視野を拡げることができた。 (2)に関しては、マレショーセにおける売官制、親任官制の運用の実態を明らかにするために、成員の就任・採用に関する史料の読解・分析を進めた。その成果の一部は(3)で挙げた論文と学会報告に活かされている。 (3)としては、論文2本(いずれも単著)の執筆、学会報告1本を挙げることができる。2論文は「フランス絶対王政期の騎馬警察 ―マレショーセ研究の射程―」(林田敏子・大日方純夫編『警察(近代ヨーロッパの探求(13))』ミネルヴァ書房、2012年所収、71~108頁)と「新生マレショーセにおける « officiers » の採用・就任手続」(『総合環境研究』第14巻第2号、2012年、11~21頁)で、後者は現在、校正中である。また、日仏歴史学会(2012年3月28日、於お茶の水女子大学)で、「マレショーセから売官制を見る ―改革直後(1720~30年)のマレショーセの官職と親任官職―」と題した研究報告を行った(平成24年度中に刊行予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この遅れは、史料の収集に想定外のばらつきが生じたことによる。すなわち、館内作業のため、あるいは移転準備による閉館のため、国立古文書館とセーヌ=マリティーム県古文書館で、予定していた史料の閲覧・収集ができなかった。その一方、ピュイ=ドゥ=ドーム県古文書館では予想外に多くの史料を収集できたため、その分析に時間がかかっている。 また、マレショーセの売官制と親任官制の運用に関して、調査対象をオート=ノルマンディーの中隊だけでなく王国全体の中隊に拡げたため、想定以上の時間が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第一の課題はマレショーセ研究を介してフランス絶対王政の官僚制を再検討することなので、本年度も引き続き、マレショーセにおける売官制と親任官制の実態解明を中心に進めていく。研究は、昨年度と同様、(1)フランスの古文書館における史料収集、(2)史料の分析、(3)論文執筆の3つの作業からなる。 (1)、(2)に関しては、9月に3週間ほど渡仏して4箇所の古文書館で史料収集を行う。セーヌ=マリティーム県古文書館では1720年の改革前の成員の就任手続に関する史料(ADSM, 3 B 51)、国防省歴史課古文書館では1730~60年の成員名簿(SHD, Yb 859)、国立古文書館では成員の就任・採用手続に関する史料(AN, Z1C 330-331 etc.)、及び関連する国王諮問会議裁決(AN, série E)、ピュイ=ドゥ=ドーム県古文書館では昨年度、収集できなかった関連史料(ADPD, série C)を収集する。 (3)に関しては、最初に、昨年度3月に行った研究報告を基に、論文あるいは研究ノート「マレショーセから売官制を見る(仮題)」を仕上げる(~5月)。次に、マレショーセ隊員に導入された親任官システムを退職と異動の面から分析する論考を書く(~8月)。上述の研究成果と渡仏の際に新たに収集した史料に基づいて、マレショーセにおける売官制を総括する研究報告を本年度の終わりまでに行う予定である(12月~2月)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に支給される予定額(直接経費)は1,200,000円である。その使用計画は以下の通りである。1 物品費 150,000円…法制史関係及びフランス近世史関係図書で78,000円(7,800円×10冊)、論文別刷で72,000円(300円×120冊×2回)使用予定。2 旅費 1000,000円…パリ、ルアン、クレルモン=フェランなどフランス各地の古文書館での調査のため800,000円、(800,000円×1回)、東京、京都、福岡で学会、研究会に出席するため200,000円の使用を予定している(東京:70,000円×1回、京都:50,000円×2回、福岡:15,000円×2回)。3 人件費・謝金 35,600円…資料の整理、パソコンへの入力で50,000円を使用する予定である。4 その他 14,400円…論文別刷の発送費として14,400円を予定している(60円×120部×2回)。
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