2012 Fiscal Year Research-status Report
フランス絶対王政の統治構造再考:官僚制、治安、裁判
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23520902
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
正本 忍 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (60238897)
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Keywords | フランス / ノルマンディー / アンシアン・レジーム / 官僚制 / 警察 / 裁判 / マレショーセ / 売官制 |
Research Abstract |
本研究は、アンシアン・レジーム期の国王の裁判所かつ警察であったマレショーセを主たる検討対象として、フランス絶対王政の統治構造を官僚制、治安、裁判の側面から再検討することを目的とする。本年度の作業も、①現地の古文書館における史料収集、②史料の読解・分析、③論文執筆の3つが予定された。その成果は以下の通りである。 ①については、9月に3週間弱、渡仏し、国立古文書館、国防省歴史課古文書館、セーヌ=マリティーム県古文書館で史料収集に努めた。ただし、校務(編入学試験および教務委員の仕事)のため、これ以上の滞在がかなわず、当初、予定していたピュイ=ドゥ=ドーム県古文書館での史料収集は困難であった。 ②に関しては、マレショーセにおける売官制、親任官制の運用の実態を明らかにするために、セーヌ=マリティーム県古文書館で収集した隊員の就任・採用に関する史料(ADSM, 3B48-51)の読解と分析を12月までに一通り終えた。 ③としては、論文2本(いずれも単著)の執筆を挙げることができる。2論文は「新生マレショーセにおける « officiers » の採用・就任手続」(『総合環境研究』第14巻第2号、2012年4月、11~21頁)と「マレショーセから売官制を見る ―全面的改組直後(1720~30年)のマレショーセの官職と親任官職―」(『日仏歴史学会会報』第27号、2012年6月、33~47頁)である。ただし、この他に準備していたマレショーセ隊員の退職と異動に関する論文を書き上げることができなかった。隊員の退職に関する論文は7月末にある学会誌に投稿したが、「書き直した上で掲載可」とされたものの、期限内に書き直すことができず、原稿を取り下げざるをえなかった。隊員の異動に関する論文はこの論文を前提として立論していたため脱稿できず、論文の執筆計画が大きく乱れることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画の遅れは主として以下の三つの理由による。 第一に、上述のように、マレショーセ隊員の退職と異動に関する論文を書き上げられなかったこと。これにより論文の執筆計画が大幅に遅れた。 第二に、昨年(2012年)のセーヌ=マリティーム県古文書館での史料収集の際、旧マレショーセの成員採用関係の文書が見つかったこと。この史料は研究計画立案時には想定されていなかった。しかし、新旧マレショーセの比較を可能にするという点で、当該史料が本研究にとって非常に重要な史料であったため、当該史料の読解と分析を先行して行うことにした。 第三に、予定していたピュイ=ドゥ=ドーム県古文書館での史料収集(とりわけマレショーセ成員の閲兵関係文書の収集)ができなかったこと。この史料の不足により、隊員の退職に関する論文執筆が部分的に滞ることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第一の課題はマレショーセ研究を介してフランス絶対王政の官僚制を再検討することであり、その作業がまだ終わっていないので、本年度も引き続き、マレショーセにおける売官制と親任官制の実態解明を進めざるをえない。研究は、昨年度と同様、①現地の古文書館における史料収集、②史料分析、③論文執筆の3つの作業からなるが、最終年度の本年は作業の比重を変え、論文執筆を最重要視する。 ①、②に関しては、8月末から9月にかけて3~4週間ほど渡仏して4箇所の古文書館で史料収集を行う。国防省歴史課古文書館では1730~60年の成員名簿の残り、国立古文書館では成員の就任・採用手続に関する史料の残り、及び関連する国王諮問会議裁決、ピュイ=ドゥ=ドーム県古文書館では一昨年度、収集できなかった関連史料(特に閲兵関係文書)、セーヌ=マリティーム県古文書館ではマレショーセの訴訟記録を収集する。 ところで、当初予定していたマレショーセの警察部門および裁判所部門の活動の実態解明に関しては、今年度中に論文執筆まで進めるのは事実上、困難である。したがって、来年度以降のできるだけ早い時期に論文を書き始められるように、この点に関する史料収集、史料分析を本年度にできるだけ進めておきたい。 ③に関しては、最初に、昨年度書き終えられなかった2論文、すなわち隊員採用に導入された親任官システムを退職と異動の面から分析する論文を書く(~8月)。現地での史料収集から帰国した後は、昨年度、セーヌ=マリティーム県古文書館で収集し、読解・分析した史料を基に、旧マレショーセの隊員の就任・採用に関する論考をまとめる(11月)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に支給される予定額(直接経費)は1,300,000円である。その使用計画は以下の通りである。 1 物品費 232,000円…法制史関係及びフランス近世史関係図書で160,000円(8,000円×20冊)、論文別刷で72,000円(300円×120冊×2回)使用予定。 2 旅費 1000,000円…パリ、ルアン、クレルモン=フェランなどフランス各地の古文書館での調査のため800,000円、(800,000円×1回)、東京、京都、福岡で学会、研究会に出席するため200,000円の使用を予定している(東京:70,000円×1回、京都:50,000円×2回、福岡:15,000円×2回)。 3 人件費・謝金 53,600円…資料の整理、フランス語資料のパソコンへの入力で53,600円を使用する予定である。 4 その他 14,400円…論文別刷の発送費として14,400円を予定している(60円×120部×2回)。
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