2011 Fiscal Year Research-status Report
チェコスロヴァキアとハンガリー間の住民交換にみる国民的地域的再編と記憶の継承
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23520903
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山本 明代 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (70363950)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 住民交換 / 強制移住 / ハンガリー / チェコスロヴァキア / 第二次世界大戦 / ドイツ人の「追放」 / セーケイ / 記憶 |
Research Abstract |
初年度である2011年度は、本研究において対象とするチェコスロヴァキアとハンガリー間の住民交換の分析枠組みを構築し、実証的に考察するための準備を行うことが目的だった。この計画を実施するために、9月と3月の2度に渡ってハンガリーにおける調査を行った。9月には国立図書館において主要文献・資料の収集とベーケシュ県の県文書館で移住委員会文書とボロシュ・ゾルターン文書を収集した。また、滞在中にスロヴァキア史研究者の長與進氏とドゥシャン・コヴァーチ氏にインタビューを行い、貴重な情報を得た。その後、収集した文献や資料を検討する中で、事例としては、スロヴァキア系住民が多く、2国間の住民交換の拠点となったベーケシュ県よりもドイツ系住民の強制移住と住民交換との関連性が分析可能なドナウ川以西地域を取り上げる方が本研究の課題の解明により適切であることがわかった。11月にはハンガリー人研究者とのワークショップにおいて、「第二次世界大戦後ハンガリーにおける住民交換と強制移住―ドナウ川以西地域を中心に―」と題する報告を行い、研究動向をまとめる邦語論文を執筆した。 3月の調査では、ドナウ川以西地域のバラニャ県文書館で移住委員会の資料を収集した。加えて、バラニャ県フェケドとヴェーレンドにおいて、ドイツ系住民の強制移住、スロヴァキア南部からの住民交換、バーチカから移住したセーケイの移住経験者たちから貴重な体験を聞くことができた。この三者の移住の形態と相互の関係性の分析が第二次世界大戦後のローカルな地域社会の変容を知るうえで重要なポイントとなることもわかった。 今年度の計画では強制移住と住民交換の決定に重要な影響を与えたイギリスなどの列強の動向やスロヴァキアとチェコにおける調査ができなかったため、予定していた旅費の額を全額使用することができなかった。その分は2012年度の夏と春の調査で補う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度の計画のうち、本研究のための分析枠組みの構築と実証研究のための準備については文献収集と専門家へのインタビューなどによって順調に進んでいる。強制移住の経験者へのインタビューを初年度から取り組んだり、ワークショップにおいてハンガリー語で報告したのは計画以上の進展である。他方、住民交換のもう一つの当事国であるチェコとスロヴァキアでの調査や列強の動向について調査を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年度の計画の中でも、強制移住と住民交換の決定に重要な影響を与えたイギリスなどの列強の動向やスロヴァキアとチェコにおける調査ができなかったため、予定していた旅費の額の一部使用することができなかった。その分は2012年度の夏と春の調査で補う計画である。主として取り組む課題は、住民交換と強制移住に伴う地域的再編の社会的・文化的問題である。2011年度に行った調査とその成果のまとめに基づいて、ドナウ川以西地域に焦点をあてて、国立図書館・文書館、県文書館での史料収集と強制移住と住民交換の経験者へのインタビュー、専門家へのインタビューを進める。収集した文献・史料・インタビューの情報を整理し、英語論文を執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
夏には、2011年度に行うことができなかったドイツ、チェコ、スロヴァキアの文書館と図書館への調査に加え、ハンガリーの文書館と図書館においても資料収集を行う。2011年度に行ったバラニャ県での文書・文献の調査とインタビュー調査を継続し深化させる。春にはこれらの補充調査を行う。研究費のうち、旅費はこの海外調査のための旅費に使用する。その他にも東京大学付属図書館など国内での資料調査にも旅費を使用する。最新の研究文献の購入のために設備備品費を使用する。
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Research Products
(2 results)