2011 Fiscal Year Research-status Report
16世紀前半の聖地巡礼記に見る十字軍観・ムスリム観・イスラーム観の変容
Project/Area Number |
23520905
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
櫻井 康人 東北学院大学, 文学部, 教授 (60382652)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヨーロッパ中世史 / ヨーロッパ近世史 / 十字軍史 / 聖地巡礼史 |
Research Abstract |
今年度は、年代的に見て始めの約50作品、具体的には、ピエトロ・パオロ・デイ・ルチェッラーニの作品(1500年頃作成)からメルヒオール・ツア・ギルゲンの作品(1519年作成)までの分析を行った。その結果明らかとされたのは、以下の点である。 まず、当該時期において、確かに聖地巡礼を行う者の数そのものは減少傾向を見せ、かつオスマン帝国によるヨーロッパへの脅威は聖地巡礼者たちの心の中に恐怖心を生じさせた。しかし、同帝国によるヨーロッパ侵入の結果として聖地周辺域にもたらされたヨーロッパ出身のマムルークたちの存在、および同帝国による聖地周辺域への進出の結果としてもたらされた強固な警備体制が、戦地巡礼者たちに安全かつ安心な聖地巡礼を行わせる結果を生み、さらにその結果として彼らの心の中からムスリムやトルコ人に対する恐怖心や敵意を軽減させる効果をもたらしたのであった。「聖地回復の希望」は、ヨーロッパ人たちにとっての根本的な心性ではあるが、それは必ずしも対ムスリム・トルコ人という心情とは結びつくわけではなく、また「十字軍の希望」と連関するものでもなかったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、今年度は当初に予定していた対象期間の史料収集を行い得た上で、史料分析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、本年度に行った作業を、当初に設定した通りに対象期間を後ろにずらしながら推進していく。具体的には、平成24年度はフランシス・アルウァレスの作品(1520年作成)からマルタン・ド・ブリオンの作品(1540年作成)まで、平成25年度ではセバスティアン・ミュンスターの作品(1541年作成)からアントニオ・テンネレイロ(1550年作成)までの作品を検討対象とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行上に必要不可欠である史料および二次文献の収集に50万円、また史料調査・収集および国内外の研究者との意見交換のために必要となる国内外旅費として40万円を使用する計画である。
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