2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ合衆国における「市民」と「国民」の差異化に関する比較史的研究
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23520907
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
中野 由美子 成蹊大学, 文学部, 准教授 (40362214)
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Keywords | 西洋史 / 南北アメリカ史 / 先住民史 |
Research Abstract |
19世紀半ば以降の合衆国においては、南北戦争後に国民統合の機運が高まるなかで海外領土の獲得が進み、国内においては建国以来の「市民ではないインディアン」(noncitizen Indian)という法的地位を再定義する必要性が生じる一方で、新たに合衆国の海外属領となった地域では「市民ではない国民」(noncitizen national)という法的地位が創出された。本研究の目的は、19・20世紀転換期の合衆国における「市民」と(「市民ではない」という点では共通している)「インディアン」・「国民」の差異化の過程に注目して、保留地・併合地・海外属領の先住民・先住者に対する諸施策と現地社会の対応に関する比較史的研究を通じて、その歴史的意義を検討することである。 平成25年度には、上記のような問題関心に沿って、19・20世紀転換期の合衆国における先住民政策と、この時期に合衆国が獲得した海外植民地や併合地などにおける諸施策との比較検討を行った。具体的には、米西戦争によって合衆国が獲得した海外植民地における先住者の法的地位に関する政策論争についての事例研究を行った。その一例としては、当該地域の法的地位や諸施策の合法性に関して、合衆国最高裁判所における一連の審理と判決の精査が挙げられる。さらに、同時期に合衆国によって併合されたハワイにおける先住民に対する合衆国側の対応と先住社会側の対応のせめぎあいについて、一次史料・二次史料の収集とそれに基づいた検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度には、これまでの基礎的研究を通史的にまとめる作業と同時に、新たな事例研究に取り組むことを目的としていた。一方の通史については、第一段階として、1880年代から1920年代までの合衆国史の文脈のなかで、「合衆国市民」と「合衆国国民」の差異化の過程を検討する作業を行った。その一部は、概説書の一部として発表した。 他方の新たな事例研究に関しては、とくに一次史料を批判的に精査する時間をもう少し確保していきたい。具体的には、昨年度から継続して検討しているテーマではあるが、欧米諸国による植民地政策等との比較という観点から、合衆国の先住民政策や併合地・海外植民地での政策に関する基礎的な事例研究をさらに進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究テーマとしては、19・20世紀転換期のアメリカ合衆国における先住民政策に関して、併合地や海外植民地における先住民・先住者に対する政策との関連性を検討する事例研究を行う予定である。これまでは、当該テーマについて、合衆国の建国以来の先住民政策をいわば「前例」とみなして、併合地や海外植民地の先住者に対する諸施策が論じられてきたことなどを通史的に検討した。これまでに大きな流れとして通史的に整理した論点について、今後は、具体的な事例に即して一次史料の収集と精査をしたうえで、実証的な論考にまとめる作業を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、シンポジウム(学会)での発表を1回行ったが、都内だったため旅費の支出を行わなかった。また、一部の一次史料(先住民関係のテーマの雑誌をまとめたもの)が公刊されたため、海外での史料収集のための予算を使って、当該史料を購入した。以上のような変更を行ったため、次年度使用額約8万円が生じることになった。 「今後の研究の推進方策 等」欄で言及した研究を行うため、一次史料の収集と二次文献の購入のために研究費を使用する予定である。史料の収集をできるだけ効率的に行うことで、史料の精読と論文執筆の時間をなるべく多く確保するようにしたい。とりわけ、19世紀末から20世紀初頭にかけて、これまで分析を行ってきた先住民政策との比較という観点から、同時期の欧米列強による植民地政策が、合衆国の先住民政策の形成過程においてどのような影響を与えたのかを検討する作業を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)