2011 Fiscal Year Research-status Report
マザリナードと論争研究 ― 歴史社会学と文学社会学の境界領域研究
Project/Area Number |
23520911
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
野呂 康 武蔵大学, 総合研究所, 研究員 (70468817)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 論争 / フロンド / マザリナード / フランス / パンフレ / 古文書 / 国際研究者交流 / 国際情報交流 |
Research Abstract |
本研究は三年間の継続研究が予定されており、本年度はその一年目にあたる。 申請時には、全体の研究計画として次の五段階を設定した。1.東京大学付属図書館所蔵マザリナード・コレクションの紹介と列挙、2.テーマ別分類表の作成、3.欠落文書の探索、4.比較検討、5.政治史、論争史、社会史等の研究者との意見交換と共同の研究会の組織。今年度は3.までを目標としていたが、研究の過程で若干の方向修正をした。第一に、上記コレクションのうちのBコレクションのマイクロ化を実現し、ジャンセニスム運動に関係する『赤裸々なる真実』関連文書を入手・参照することができた。第二に現代文学や映画なども含めた「論争」のあり方に関して、社会科学高等研究院のクリスチアン・ジュオー研究指導教官、同院ダイナ・リバール准教授、ジュディト・リヨン-カン准教授、マルヌ・ラ・ヴァレ大学ニコラ・シャピラ准教授らと意見交換をした。ジュオー指導教官とリバール准教授は、今年度17世紀の論争文書に関するゼミナールを組織している。両氏とは本研究の最終年度に日仏共同でシンポジウムを開催するという約束をとりつけた。 その他では、1)平成20-21年度科研費(若手研究(B)(課題番号:20720092))を用いて、一橋大学付属社会科学古典資料センターにて「マザリナード展示」会を催したが、その際のパンフレットに修正を加えた。修正版は同センターにて一般公開が予定されている。2)クリスチアン・ジュオーの論集『歴史とエクリチュール 過去の記述』(東京、水声社、2011)を出版した。当該書は本研究推進者を含む訳者全員が論争研究に取り組むことで実現した日本独自編集の論集である。本研究推進者による批評論文も収録されている。3)同氏の『マザリナード 言葉のフロンド』の翻訳を終えた(水声社、印刷中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京大学付属図書館所蔵マザリナード・コレクションに含まれる文書の複写と欠落文書の調査は予定通り行われ、次年度以降に予定していた研究会の組織や海外研究者との情報交換まで進めたことは、当初の計画を大幅に越えた成果といえる。他方で、文書調査のすぐ後に予定していた比較研究や、文献表の作成は、未だ論文や翻訳といった可視的な形で報告できる状態にない。研究計画として予定した順序は方向修正をしたとはいえ、進捗状況としては概して一年目の計画以上の成果をあげられたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は今年度の研究を継続し、『赤裸々なる真実』をめぐる複数の論争文書を整理し、文献表にまとめる。また、今年度得られた知識を基に、主にジャンセニスムにおける論争の方法と特徴をまとめる。この成果はフランス社会科学高等研究院のゼミナールで、フランス語による発表を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究対象となる論争文書を資料の形で提示し、複数の研究者と研究会を組織できるよう、文書をスキャンし電子ファイルにしたい。そのためには、マイクロリーダー、スキャナー、スキャンソフト、複写機、プリンター等の機器を揃える予定である。また、最終年度に予定しているシンポジウムを実現するため、次年度中にフランス語で発表をし、より広く研究者の関心を喚起する。そのため、二度の研究旅行を予定している。
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Research Products
(3 results)