2011 Fiscal Year Research-status Report
近世ドイツ追悼説教パンフレットの史料的価値をめぐる考察~ベルリンを事例として~
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23520914
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
塚本 栄美子 佛教大学, 歴史学部, 准教授 (90283704)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 史料研究 / ドイツ近世史 / プロテスタント / ベルリン / 記憶 / パンフレット / 上層市民 |
Research Abstract |
ドイツ諸都市の上層市民のあいだで近世にはいり好んで作成されるようになる「追悼説教パンフレット」の歴史資料としての可能性を探るため、かねてより王侯・貴族たちにより作成され、研究蓄積も多い「祝祭本」との比較を試み、史料としての類似の可能性と、「追悼説教パンフレット」ならではの特質を明らかにしようとしている最中である。 また、授業休止期間中の夏季には、ベルリン国立図書館において、16世紀半ばから18世紀におよぶ追悼説教パンフレットの調査を行った。同図書館では、現在蔵書管理の電子化がすすんでいるが、近世文書についてはまだ不完全であり、手稿のカタログに頼る部分も少なくない。報告者はまず、当該史料が掲載されているカタログ冊子Nr.1053~Nr.1063(1543年~1809年)を調査し、ベルリンあるいはブランデンブルク選帝侯領に関係するもの、約670件が残存する可能性があることを確認した。そのうえで、17世紀を中心に閲覧可能なものを調査し、その中で注目に値すると思われる数十点を筆写あるいは複写することにより持ち帰った。 期間後半では、それらのうち数点の翻訳と分析をすすめ、従来の研究史が明らかにしてきた「追悼説教パンフレット」の特質と歴史資料としての可能性について妥当か否かを検討した。この作業は現在も継続中であるが、現時点での結論としては、地元貴族の家系や宮廷内で官職を保有していた家門のメンバー、大学教員・聖職者については、従来の研究で指摘されてきたような人的関係を明らかにする史料としての可能性が大いに期待される。だが、調査のなかで、こうした上層市民に該当しないと思われる人びとの事例も散見された。彼らについて、入手した追悼説教に付された経歴以上のことを知るのは困難と思われるが、こうした人びとについても可能な限り検討を行い、紙碑の拡大による名誉観の階層間の広がりを検討する糸口としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
おおむね順調であるともいえるが、困難な問題をあえて指摘すると、ベルリン国立国会図書館をはじめドイツ国内で追悼説教パンフレットのデジタル化事業が進行中で、その作業のために史料の相当数が公的機関により長期借用されているケースが散見されることである。現時点でも、平成25年夏ごろまで貸しだされたままであるものがいくつか確認されている。これらの史料の内容を確認し、分析に加味するには、一定の遅延が強いられる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では、平成24年度までで現地調査を終了する予定であった。だが、前項目に記した問題に対応するため、最終の海外調査の時期をずらすか、短期間の調査を追加するかいずれかの方策を検討したい。 推進方策については、基本的に計画書の通り進めていく。すなわち、平成24年度は、前年度に収集した史料のテキスト部分の分析を進めていくとともに、次の海外調査の準備を進める。次回の調査は、より大きな追悼説教パンフレットのコレクションを有するdie Herzog August Bibliothekを中心に行う。そこでは、より幅広く、研究対象となるベルリン、ブランデンブルク選帝侯領にかかわるもの、とりわけ信仰難民など何らかの理由で移入してきた層の史料の調査にあたりたい。 また、経歴部分の個人データ整理について、研究史やテキスト部分の解析から整理項目やデータの抽出方針を決め、解析のためのデータ入力作業にも着手する。 以上のプロセスを着実にこなしていくことにより、研究計画の最終年度には報告書をまとめることができると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きベルリンの追悼説教パンフレットの収集にあたる。作業は平成23年度同様授業休業期間を利用して行う。平成24年度は、ドイツでもっとも大きな追悼説教パンフレットのコレクションを有するヴォルフェンビュッテルにあるdie Herzog August Bibliothekでその作業にあたる。また、前年度のベルリンでの調査では、ドイツ系改革派住民のものは確認できたが、フランス系改革派住民(ユグノー)のそれは確認できなかった。平成24年度は後者の調査に重点をおくと同時に、彼らが同種の文化をもたなかった場合には、これに代わる史料の開拓にも努めたい。そのために、必要に応じて、パリでフランス系改革派にかかる文献調査ならびに史料調査を行う。これらの海外調査を含め、史料調査の旅費に研究費の約半分を使用する。 日本では年間を通じて、収集した史料の整理とともに、前年度収集の史料も合わせ、前半のテキスト部分の分析を行い、近世ベルリンの名誉観、死生観、家族観などの変遷を明らかにする。平行して、年度内に完了するのは困難と思われるが、追悼説教パンフレットに掲載されている個人的な情報を統計処理するための予備作業を行う。そのために、研究費の一部を人件費として計上している。 その他、必要な文献資料の購入、マイクロフィルムの焼き付けなどのために物品費ならびにその他の費用を計上している。
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