2012 Fiscal Year Research-status Report
近世ドイツ追悼説教パンフレットの史料的価値をめぐる考察~ベルリンを事例として~
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23520914
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
塚本 栄美子 佛教大学, 歴史学部, 准教授 (90283704)
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Keywords | 史料研究 / ドイツ近世史 / プロテスタント / ベルリン / 記憶 / パンフレット / 上層市民 |
Research Abstract |
今年度は、改革派の追悼説教パンフレットの調査に焦点をあてた。まず、南仏の改革派がとった亡命ルート上にあるスイスおよびフランクフルト・アム・マインで文献調査を行ったのち、ヴォルフェンビュッテルにあるアウグスト・ヘルツォーク図書館でベルリンもしくはブランデンブルク・プロイセンに関係のある追悼説教パンフレットの調査を行った。また、ベルリンにおいても、ベルリン国立国会図書館および市立図書館で改革派の追悼説教パンフレットの調査を行った。 さらに、現地調査だけでなく、昨年度の「やや遅れている」という進捗状況の原因にもなっていたドイツにおける当該史料のデジタル化が進展したおかげで、一部の史料がネットに公開され、史料調査進展の助けとなった。 こうして入手した史料や文献と、 昨年度のルター派の追悼説教パンフレットとあわせて、総合的に分析し、近世社会において上中層階層の人びとが自らの、そして家門全体の名誉向上、社会的上昇のために、これらのパンフレットを「記憶の場」として巧みに利用していた姿を明らかすることができた。と同時に、追悼説教の部分では、宗派による相違点も抽出でき、近世の人びとに共通な風習の中にも、それぞれの宗派の社会に対するアピールポイントの差異が存在したことを明らかにできた。 また、今年度の最終盤では、史料の具体的な姿を紹介すべく、軍人と医師という社会で一目置かれるようになった職種の人物を取り上げた論文にとりかかった。年度内での出版は難しかったが、次年度早々に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先の項目でもふれたが、昨年度の進捗がやや遅れた原因であった、ドイツにおける史料のデジタル化事業が進展したことにより、完全ではないが、昨年度の遅れを取り戻すことができた。その結果として、今年度終了時における研究の進展はほぼ順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、海外の文書館および図書館の史料・文献調査を平成24年度までに終了する予定としていたが、ドイツにおけるデジタル化事業のため閲覧不可となっていた史料が未調査のままである。先の項目で示した通り、一部はネットによる配信で解消できたが、未だ不十分である。したがって夏期の授業休業期間を利用して、補完調査を行う。それでも未見のものは出てくると思われるが、その時点で得られた分析結果を報告書としてまとめる。年度前半は、過去2年間で得られた史料の最終チェックとデータの整理を行いつつ、報告書の取りまとめにとりかかる。後半は報告書をまとめることに専念し、年度末には、報告書を印刷・製本し、関係諸機関および研究者に配布する。ほぼ当初の計画書通り研究を進めることになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3度目の海外調査が必要なことは、昨年度の報告書でも触れていた。そのため、今年度の予算執行を抑え、当初計画よりも多くの研究費が最終年度に使用できるようにした。それらの繰り越し金と次年度の予算により、渡欧による調査費用を賄えると考えている。また、その調査の折に追加の史料および文献の入手費用がかかるため、そのための費用も計上したい。次年度は最終年度にあたるため、大部の報告書を印刷し製本するための費用、配布のための費用を計上することとなる。
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