2012 Fiscal Year Research-status Report
1940-50年代のイギリス帝国における資源保全とグローバルな環境保護主義
Project/Area Number |
23520917
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
水野 祥子 九州産業大学, 経済学部, 准教授 (40372601)
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Keywords | イギリス / 帝国 / 環境 / 資源 / 保全 / 国際連合 / グローバルガバナンス / FAO |
Research Abstract |
本研究の目的は、イギリス帝国の科学者が提唱した資源保全がなぜ、またいかにグローバルな環境保護主義に強い影響を与えてきたのかを明らかにすることである。まず、1940―50年代のイギリス帝国における資源保全の枠組みを明らかにするため、1946年に開催された帝国科学者会議における議論、植民地省およびその科学諮問機関が統括した資源開発・保全構想、アフリカの植民地当局による農村開発計画などを分析した。 さらに、二次文献にも適宜依拠しつつ、包括的な土地管理計画の全体像を把握するよう試みた。特に、30年代から土地計画のなかで重要視されていた土壌保全政策や、現地住民の土地利用への介入、また、かれらの再定住を促す動きに注目した。第二次世界大戦前に比べ、大戦後から50年代にかけての資源保全制度を明らかにする実証研究はまだ少なく、本研究の意義は大きいと考えられる。 次に、第二次世界大戦後に設立された国際機関による資源保全をめぐる議論を分析した。主に国連とその専門機関である国連食糧農業機関(FAO)によって、グローバルな資源の開発・保全構想が形成されるプロセスを検証したが、当初から発展途上国(熱帯)の資源に関心が寄せられ、技術援助の必要性が提唱されていたことが明らかとなった。従来の研究では、70年代以前の国連やFAOによるグローバルな保全計画のあり方が検証されてこなかったが、本研究では、アジア、アフリカで独立する国々を巻き込みつつ、新たにグローバルな資源利用の秩序を築くことを目的として国際機関が発展途上国の資源開発・保全に援助/介入していく動きを指摘することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1940―50年代のイギリス帝国における資源保全の枠組みを明らかにするため、重要と思われる植民地科学者/官僚の報告書や著作等を幅広く検証した。さらに、グローバルな資源保全をめぐる議論を分析するため、国連やFAO設立期の年次報告書や会議議事録等の一次史料に目を通した。同時に、第二次世界大戦後の帝国における農村開発や資源保全の展開、国連の開発援助に関する二次文献の読解をすすめた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、1940―50年代のイギリス帝国における資源保全の特質を明らかにするため、植民地科学者/官僚に注目する。かれらは植民地の専門部局に所属する科学者であり、フィールドワーカーでもあった。かれらと、植民地省や植民地政府に助言を与える役割を担った科学顧問、専門部局の長官らとの間の認識のギャップや、科学・技術者と経済学者の開発概念のずれ、農村開発に対するアプローチの違いを検証しつつ、どのような資源管理・保全制度が構想され、そのなかに現地住民の土地利用が位置づけられたのかを検討する。 同時に、イギリス帝国で構築された資源保全の思想や制度がグローバルな環境保護主義に及ぼしたインパクトについて考察する。まず、1949年にニューヨークのレイク・サクセスで開催された「資源の保全と利用に関する国連科学会議(United Nations Scientific Conference on the Conservation and Utilization of Resources)」に焦点を当て、イギリスをはじめヨーロッパの植民地の専門部局や研究機関に所属する科学者の議論を分析し、現地の状況、資源利用・保全のための施策やその成果と課題がいかに認識されていたかを示す。また、かれらの主張が資源のグローバル・ガバナンスをめぐる構想のなかでいかに位置づけられたかを明らかにする。さらに、国連やFAOが始めた発展途上国の開発のための技術援助プログラムについても検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)