2012 Fiscal Year Research-status Report
都市造営の思想読解の研究-平泉におけるGIS(地理的情報システム)の利用-
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23520921
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
前川 佳代 奈良女子大学, 古代学学術研究センター, 協力研究員 (70466415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大矢 邦宣 盛岡大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (80405878)
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Keywords | GIS(地理的情報システム) / 都市 / 考古学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、地理的情報システムであるGISを利用して、岩手県・平泉の発掘調査で検出された遺構のデーター化と空間分析・解析を行い、それらを基に周囲の遺跡や地理的環境からマクロ的視点で奥州藤原氏の都市造営の思想を読み解くものである。 研究期間内に、1.発掘調査遺構のデーターベース作成、2.都市構造の復元図作成、3.都市内外の可視領域の検討、広範囲な地理的環境から検討、4.都市内の集水システムの解明、5.旧地形の復元を行う。 平成24年度は、昨年度に引き続き、目的の1、2、3、の作業を行った。特に2については、今年度から岩手県教育委員会の協力を得て、柳之御所遺跡の遺構原図を借り出して原図をスキャニングさせていただいている。平泉町分についても、平泉文化遺産センターの協力をもって今年度末から過去の遺構原図をスキャニングさせていただけることになり、現在進行中である。当初は原図を郵送していただき、奈良市内の業者にスキャニングを依頼していたが、郵送時の事故が懸念されたため、一関市内の業者に依頼することにした。これらのデーターは、データーの共有と事故時の対応のために岩手県教育委員会と平泉文化遺産センターにも同じものを提供している。 GPSを利用しての現地踏査は、平泉町内の旧跡地や、周辺地域の遠くは紫波町の道路跡、また風水的にみて太祖山と考えられる栗駒山までも対象として行った。 私は、平泉では太陽の動きと密接に関連した施設配置がなされていると仮定しているため、前九年合戦が終了した旧暦9月17日と冬至の日の出の位置を確認した。また関西の平泉関連遺跡へも調査を行った。 これらの作業とは別に、昨年度、都城制研究集会で報告した「平泉の宗教施設と風水思想」を活字化し、『都城制研究』(7)(2013年3月)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、研究目的の1.発掘調査遺構のデーターベース作成、2.都市構造の復元図作成、3.都市内外の可視領域の検討、広範囲な地理的環境から検討することをてがけた。今年度から遺構原図をスキャニングさせていただけるようになったものの、ソフトにはめ込む作業は、非常に膨大な枚数にのぼるためなかなか進まない。さらに今年度末から平泉町分のスキャニングも進行中である。作業は遅れているものの、データーの集積という意味では、多大な成果である。遺構原図のデーター化は、調査機関でも平泉研究でも実施されていない。いまだに地震が頻発している岩手県内にあって万一原図が事故にあった時はデーターでカバーでき、閲覧という面でも利便性があり、コンパクトに保管できるため、本研究にも、岩手県教育委員会や平泉文化遺産センターにとっても、今後の平泉研究にも有益であると思われる。スキャニングは、原図移動の事故が懸念されたため、平泉町近くの一関市内の業者を選び行うことにして、データーも二部作り、平泉とこちらで管理する体制をとった。 遺構原図の合成をGISソフトで行うと、調査の段階による遺構の見え方がわかり、発掘調査時の遺跡全体の理解につながり、報告書作成時には、遺構を貼りあわせる時間の短縮につながる。このようなことを岩手県教育委員会や平泉文化遺産センターに理解していただいたことから、スキャニングの了承を得られたものと思う。 現地調査は、特定日の日の出を観察する趣旨や目的の3のために行った。また、平泉と同時期の福原京関連の遺跡や、庭園跡などへも足を運び、比較研究できた。 昨年度、都城制研究集会で報告した「平泉の宗教施設と風水思想」の執筆のため、関連する遺跡も現地踏査を行い、新たな知見を得ることができた。その成果を活字化して『都城制研究』(7)に掲載された。 以上より、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、目的の1.発掘調査遺構のデーターベース作成、2.都市構造の復元図作成、3.都市内外の可視領域の検討、広範囲な地理的環境から検討を行いつつ、今年度できなかった4.都市内の集水システムの解明、5.旧地形の復元をもてがけたい。 予定していた4.都市内の集水システムの解明、5.旧地形の復元までは手をつけられなかったが、平泉町内の水系配置と、滋賀県日吉大社と里坊地域の水系配置が似ていることに気付いたので、4を充実させ、明文化したいと思う。 スキャニングは、岩手県教育委員会と平泉文化遺産センターで了承を得て、進行しているが、研究期間中に過去数十年の遺構原図のスキャニングが完了できるかは不透明であり、報告書図面で全体像を作成する。また、岩手県埋蔵文化財センター調査分の遺構原図も借り出してスキャニングできるよう、交渉する予定である。それにより、三行政機関が平泉町内の調査を行い、発掘調査遺構図面が三機関に保管され、しかも平泉町と盛岡市に散在している現状から、データーでまとめて保管することができ、遺構原図の散逸が防げ、利用も便利となろう。 次年度は最終年度にあたるため、本研究の成果を研究会やシンポジウムを開催して広く公表する予定である。平泉町内においても広く公表していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は最終年にあたる。岩手県教育委員会や平泉文化遺産センターの協力を得て、過去の発掘調査の遺構原図をスキャニングさせていただいているが、非常に膨大な量にのぼるため、スキャニング代を中心に研究費を使用したい。遺構原図の枚数は各機関とも把握されておらず、そのスキャニング代を考慮して未使用額がある。また上記二機関以外に平泉町内を調査している岩手県埋蔵文化財センターで保管されている平泉町分の遺構原図についても、借用し、スキャニングをすすめたい。 また平泉の施設配置が天体の動きと密接に関連する持論を検証するため、秋分の日と夏至の日の出を確認したい。研究目的「3.都市内外の可視領域の検討、広範囲な地理的環境から検討」を実施するため、平泉に関連する周辺地域の踏査も行いたい。研究目的「4.都市内の集水システムの解明」に関連して、平泉と似通った構造を持つと思われる日吉大社付近の現地調査も行いたい。岩手県以外の地域の平泉関連遺跡についても現地調査したい。また、最終年度のため、研究分担者や連携研究者と本研究のまとめを協議したい。このような調査のために旅費を使用したい。 最終年度のため、本研究成果を奈良女子大学にて研究会やシンポジウムを開催したいため、講師の旅費や謝金の費用も予定している。
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Research Products
(1 results)