2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520922
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野島 永 広島大学, 文学研究科, 准教授 (80379908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古瀬 清秀 広島大学, 文学研究科, 教授 (70136018)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 弥生時代 / 初期墳丘墓 / 四隅突出型墳丘墓 / 塩町式土器 / 首長制社会 / 炭素年代測定 |
Research Abstract |
弥生時代墳丘墓は西日本を中心にして後期後半以降に急激に発達するが、広島県北部や近畿地方北部など一部の地域ではいちはやく弥生時代中期後葉までにマウンドをもつ墓が成立する。三次市を中心とした広島県北部地域では中期中葉から後葉にかけて墓壙を掘削し、埋葬を終了した後に盛り土を施す墳墓が顕在化してくる。このような初期弥生墳丘墓の実態を明らかにするために、平成20年度から佐田谷・佐田峠墳墓群の発掘調査を継続して行っている。今年度は佐田峠1号墓と2号墓の発掘調査を行った。出土土器から両者ともに弥生時代後期前葉にまで降るものと考えられたが、墳丘隅角が突出した形状にはならないことが確認できた。このことから四隅突出型墳丘墓が方形台状墓から発達して変化したのではなく、「分岐」したと想定した方が妥当であることが判明した。このような調査成果を概要報告として広島大学考古学研究室紀要に掲載した(「佐田峠墳墓群(第5次)の調査」『広島大学考古学研究室紀要』第4号、2012年3月)。 また、広島県北部では墳丘墓の成立とともに出現してくる塩町式土器の実年代を推測するべく、塩町式土器に共伴した種子(庄原市和田原遺跡出土資料)のAMS炭素年代測定を行った。 さらには、広島大学考古学研究室所蔵の弥生時代墳丘墓の発掘調査資料(三次市四拾貫小原遺跡・三次市岩脇遺跡等)を再整理し、その図化・整理に努めた。関連作業として、中国地方の弥生時代墳丘墓の類例資料の収集とその整理を行い、墳丘土層断面図等から墳丘の構築と墓壙の掘削の先後関係などを確認していった。 以上のような作業によって、弥生時代中期後半期のいわゆる初期墳丘墓の構築状況と、三次市を中心とした塩町式土器の普及範囲における初期墳丘墓との比較検討を開始する基礎的資料を整えていくことができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究期間の初年度であり、広島大学考古学研究室に所蔵された弥生時代墳丘墓の調査資料等を確認・整理し、その一部については実測することに時間を割かねばならなかった。また、発掘調査に関しても庄原市教育委員会との共同研究推進に関してやや遅れをきたした部分があったものの、おおむね当初目論んだ研究計画通りに、発掘調査・塩町式期試料によるAMS年代測定・広島大学所蔵関連資料の確認・整理と図化・類例資料の収集といった各作業すべてに着手することができた。 ただ、墳丘墓の土層断面図などの原データの確認は思うように進んではいない。とくに発掘調査が20年以上前のケースになると、ほとんどすべてにおいて調査の原記録の所在を確認するのに時間がかかった。確認のための時間的な折り合いがつかなかったことから、原データの確認が遅れている。次年度以降は計画的に原データの確認に時間を割いていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24・25年度の作業としては、平成23年度の作業を継続しつつ、資料収集地域を拡大していきたい。具体的には、平成24年度も佐田谷・佐田峠墳墓群の発掘調査を継続し、墳丘構築方法の変遷とともに墳丘構築と墓壙掘削の先後関係を明らかにする成果を得ていく。それとともにやや遅れている中国地方における墳丘墓の調査データの再確認も引き続き行っていきたい。 また、塩町式土器の実年代を推測するために、その型式学的変遷を目論んだ編年構築作業を充実させる。指導している大学院生とともに、広島大学考古学研究室所蔵の塩町遺跡出土の塩町式土器の実測を行い、図化記録を公開するための基礎的な作業に着手したい。それとともに新たな炭化物試料の確保に努力し、AMS炭素年代測定を予定したい。これにより、初期墳丘墓の変遷過程が実年代でどのくらいのものであるかを想定し、佐田谷・佐田峠墳丘墓の構築状況が一世代にどのくらいであったのかを推測する足掛りともしていきたい。 さらには四隅突出型墳丘墓だけでなく、方形台状墓や方形貼り石墓など、中期後半から後期前半にかけての初期墳丘墓の類例資料の収集を近畿地方から北陸地方に広げ、できれば、調査当初の墳丘土層断面図等の図化データの直接確認を行っていきたい。それとともに墳丘墓出土遺物(副葬品・土器)の観察と写真撮影を行う。研究協力者や指導大学院生とともに近畿地方や北陸地方の各調査団体に赴き、原データの確認を行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まずは中国地方、おもに山陰地方と近畿地方北部・北陸地方における弥生時代墳丘墓の類例資料整理のため、指導している大学院生とともに各種文献の収集、コピーを再開する。また、彼らとともに広島大学考古学研究室所蔵の塩町遺跡出土の塩町式土器の実測を開始する。塩町式土器の基礎的資料の記録公開の準備を行い、あわせて塩町式土器の編年を構築する。大学院生を広島大学非常勤職員として雇用し、資料の収集とともに大学所蔵の塩町式土器の実測を行う。また、できれば塩町式期にあたる炭素試料を探索し、実年代確認のために炭素年代AMS測定を委託し、実年代データの収集を継続していきたい。 さらに、関連する弥生時代中期後半から後期前半を中心として墳丘墓調査記録の原データの確認や副葬品等の観察・実測・写真撮影のため、大学院生とともに旅費を使用して各種調査団体に赴きたい。調査担当者に当時、墳丘構築状況に関する聞き取りも行っていきたい。 このため、資料のコピーのためにコピー・カードを購入する。資料の実測のための測量文具や、資料の観察あるいは写真撮影のための撮影機材や整理ファイル・文具等を購入する。 また、弥生時代墳丘墓に関する図書を購入する。そして墳墓の発展に関する多様な分野の研究との比較検討を行うために、未開社会における墳墓の造営や欧米における首長制社会の発展に関する関連文献のコピー依頼、関連人類学図書の購入も行いたい。
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Research Products
(6 results)