2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520922
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野島 永 広島大学, 文学研究科, 准教授 (80379908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古瀬 清秀 広島大学, 文学研究科, 教授 (70136018)
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Keywords | 考古学 / 弥生時代 / 墳丘墓 / 塩町式土器 / 三次・庄原地域 |
Research Abstract |
弥生時代の墳丘墓は後期後半以降に急激に発達するが、広島県北部や近畿地方北部など一部の地域ではいちはやく弥生時代中期後葉までにマウンドをもつ墓(墳丘墓)が出現する。三次市を中心とした広島県北部地域では中期中葉から後葉にかけて墓壙を掘削し、埋葬を完了した後に盛り土を施す墳墓がみられるようになる。このような初期弥生墳丘墓の実態を明らかにするために、平成20年度から佐田谷・佐田峠墳墓群の発掘調査を継続して行っている。今年度は佐田谷2・3号墓と佐田峠1・2号墓の発掘調査を行った。それぞれ、墳丘頂部埋葬施設の確認を行い、墓壙掘削後に墳丘を構築する墳丘墓(墳丘後行型)と、墳丘を構築した後に墓壙を掘削し、埋葬を行う墳丘墓(墳丘先行型)を峻別することができた。さらには墳丘頂部の墓壙の配置状況には、この墳丘先行型か墳丘後行型かで異なる状況となることが判明し、墳丘後行型から先行型へと変容していった状況を確認した。このような調査成果の概要報告をおこなった(「佐田谷・佐田峠墳墓群(第6次)の調査」『広島大学考古学研究室紀要』第5号、2012年3月)。また、広島大学考古学研究室所蔵の弥生時代墳丘墓の発掘調査資料(三次市四拾貫小原遺跡・高平A号墓・岩脇遺跡等)を再整理し、その図化に努めた。関連作業として、中国地方の弥生時代墳丘墓の類例資料の収集とその整理を継続した。広島県における弥生時代初期墳丘墓の墳丘土層断面図実測図等の複写を行ない、発掘調査の1次資料(現地測量・実測図)から、墳丘の構築と墓壙の掘削の先後関係などを確認していった。以上のような作業によって、弥生時代中期の三次・庄原地域の初期墳丘墓は江ノ川下流域にその祖型をもつことが推測できた。また、三次・庄原地域における四隅突出型墳丘墓の発生によって、吉備地域との交流が始まり、伯耆・因幡から丹後地域の墳丘墓に影響を与えていったことが推測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究期間の2年目であり、佐田谷・佐田峠墳墓群の発掘調査をおこなった。庄原市教育委員会との共同研究推進に関して、やや遅れをきたした部分があったものの、おおむね当初目論んだ研究計画通りに、発掘調査を遂行することができた。今年度の佐田谷・佐田峠墳墓群の調査によって土器資料を入手することができた。今後はこの関連資料の確認をおこない、その系譜を追う作業も必要となった。また、広島大学考古学研究室に所蔵された弥生時代墳丘墓の調査資料等を確認・整理し、図化を完了した。関連資料の確認・整理と図化・類例資料の収集といった各作業すべてに着手することができた。ただし、墳丘墓の土層断面図などの原データの確認は思うようには進んではいない。とくに発掘調査が20年以上前のケースになると、ほとんどすべてにおいて調査の原記録の所在の確認、閲覧と複写、申請等に時間がかかり、確認のための時間的な折り合いがつかなかったことから、原データの確認が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、佐田谷・佐田峠墳墓群の発掘調査の整理報告を集大成し、庄原市教育委員会とともに報告書を完成させることとなる。とくに墳丘構築と墓壙掘削の先後関係を明らかにしつつ、墳丘構築方法の変遷とその文化的脈絡を描写していく。このため、墳丘墓出土遺物(副葬品・土器)の観察と写真撮影を行う。出土土器資料の研究から塩町式土器の系譜を明らかにしていく。広島大学考古学研究室所蔵の塩町遺跡出土の塩町式土器の実測を行い、図化記録を公開するための基礎的な作業に着手したい。それとともにやや遅れている中国地方における墳丘墓の調査データの再確認も引き続き行っていきたい。 さらには四隅突出型墳丘墓だけでなく、方形台状墓や方形貼り石墓など、中期後半から後期前半にかけての初期墳丘墓の類例資料の収集を山陰地方から近畿地方北部に広げ、できれば、調査当初の墳丘土層断面図等の図化データの直接確認を行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
佐田谷・佐田峠墳墓群の発掘調査の報告書作成のために、出土した土器群の再整理、写真撮影をおこなう。山陰地方と近畿地方北部における弥生時代墳丘墓の類例資料整理を継続し、大学院生とともに各種文献の収集、コピーを再開する。このため、資料の複写のためにコピー・カードを購入する。比較関連資料として広島大学考古学研究室所蔵の塩町遺跡出土の塩町式土器の実測をおこなう。塩町式土器の基礎的資料の紹介とともに塩町式土器の編年を構築する。また、関連する弥生時代中期後半から後期前半を中心とした墳丘墓調査記録の原データの確認や副葬品等の観察・実測・写真撮影のため、旅費を使用して大学院生とともに各種調査団体に赴きたい。 このような作業遂行のために、大学院生を広島大学非常勤職員として雇用し、出土遺物の整理、写真撮影や関連資料の収集を継続する。できれば塩町式期にあたる炭素試料を探索し、実年代確認のために炭素年代AMS測定を委託し、実年代データの収集を継続したい。 最終年度にあたる平成25年度の研究費の多くは3年間の調査研究の成果をまとめ、冊子として刊行するための印刷費に充当したい。
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Research Products
(13 results)