2011 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク分析を用いた国家形成期社会の中心化・成層化過程の研究
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23520925
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
溝口 孝司 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (80264109)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ネットワーク分析 / 中心性 / 成層化 / 国家形成 / 弥生時代 / 古墳時代 / 日本 / ブリテン島 |
Research Abstract |
本研究は、ネットワーク分析の理論と技法を用いて、日本列島の国家形成期における社会関係の中心化と成層化の条件と、そのメカニズムを解明することを目標とする。ネットワーク分析は、様々なスケールと内容の社会的行為単位(「アクター」もしくは「ノード」)が取り結ぶ多様な関係が創発する社会的制約、競争、派閥、中心性、権力等を、ノード間の関係構造の数理モデル化、解析により明らかにするものである。 本年度の研究実施計画は、日本列島弥生時代中期(弥生III・IV期)~後期(V期)前半、ブリテン島新石器時代~青銅器時代前半を対象として、選択された研究対象地域ごとに、1) それぞれの集落分布状況の把握とノードの析出をおこない、2) それぞれのノード、それが属する地域間の交渉の有無・濃淡の析出を試み、3) それに基づき、各ノードの中心性スコアの算出を試みる、以上であり、これらを着実に実施した。その際、主な分析対象とした北部九州地域に関しては、各ノード、また、それらの所属地域間の関係の濃淡の基準として、成人埋葬容器としての甕棺の形態学的類似性を参考とした。また、弥生時代中期後半(IV期)については、楽浪郡を通じた前漢帝国との交渉関係が、北部九州地域ネットワークのありかたに大きな影響を与えているとの見込みから、楽浪郡をノードとして加えたネットワーク、これを加えないネットワーク、また、ネットワーク外縁部についてもいくつかのモデルをそれぞれ措定して、それぞれにつき各ノードのネットワーク中心性を算出し、実際の考古資料の示すパターンとの一致・不一致を検討した。 また、ブリテン島については、同中西部ヘリフォード州を中心として2週間のフィールドワークならびに資料収集をおこない、新石器時代におけるネットワークの実態検討の基礎資料を獲得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画は、日本列島弥生時代中期(弥生III・IV期)~後期(V期)前半、ブリテン島新石器時代~青銅器時代前半を対象として、選択された研究対象地域ごとに、1) それぞれの集落分布状況の把握とノードの析出をおこない、2) それぞれのノード、それが属する地域間の交渉の有無・濃淡の析出を試み、3) それに基づき、各ノードの中心性スコアの算出を試みる、であった。主な分析対象とした北部九州地域に関しては、各ノード、それらの所属地域間の関係の濃淡の基準として、成人埋葬容器としての甕棺の形態学的類似性を参考としてノード析出の適切さの検証と、実際の中心性算出をおこなった。また、弥生時代中期後半(IV期)については、楽浪郡を通じた前漢帝国との交渉関係が、北部九州ネットワークのありかたに大きな影響を与えているとの見込みから、楽浪郡をノードとして加えたネットワーク、これを加えないネットワーク、また、ネットワーク外縁部についてもいくつかのモデルを措定して、それぞれについて各ノードのネットワーク中心性を算出し、実際の考古資料の示すパターンとの一致・不一致を検討した。また、その他の西日本各地域についても、主要集落の正確を吟味し、ノードとしての認定をおこなった上で、ネットワーク復原に着手した。これらについての中心性算出は次年度の課題とする。 また、ブリテン島については、同中西部ヘリフォード州を中心として2週間のフィールドワークならびに資料収集をおこない、新石器時代におけるネットワークの実態検討の基礎資料を獲得した。この作業により、ノード的集落の分布にかなりの偏りが見られることから、このことをネットワーク復原にどのように生かすのか、の検討が課題として析出された。 以上、分析の進展と、それにともなう問題点の析出ができたことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、日本列島については、西日本における北部九州地域以外の地域において、本年度析出したネットワークに基づき、各ノードの中心性を算出し、各地域の考古資料の示す動態との対比をおこない、集落間関係を核とする社会関係の成層化のメカニズムと、その主要な要因について検討する。並行して、これらの地域に、初期前方後円墳・前方後方墳分布域を加えて、弥生時代後期(V期後半)~古墳時代開始期の様相について、各地域ごとに同様の分析、すなわちノードの認定、ネットワークの復原、各ノードの中心性の算出をできるかぎりすすめる。この作業により、最終年度には、弥生時代中期~後期前半の様相と弥生時代後期後半~古墳時代初頭の様相を相互比較し、前者から後者への移行動態を検討することを可能にする。ネットワーク分析結果と考古資料の動態との対比で明らかになるはずの中心性格差生成の要因が、それぞれの時期で一致するのか、異なるのか、例えば、前漢との交渉、後漢との交渉、その後勃興した諸勢力との交渉は、それぞれネットワークにどのような影響を及ぼし、ひいては、ネットワーク中心性構造の変容や格差の増大にどのように関与したのか、を検討することによって、国家形成期の社会構造変動の一般モデルの構築をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、上述のように、基本的に今年度実施作業を、対象時期を移して継続することとなる。そのため、設備備品についてはネットワーク分析関連図書の購入を継続するとともに、調査(連合王国を含む)、資料収集、収集資料整理のための謝金・事務用品費、そして、研究成果公表(国際学会での報告、論文執筆)のための英文チェック費、それぞれを計上する。
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Research Products
(1 results)