2012 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク分析を用いた国家形成期社会の中心化・成層化過程の研究
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23520925
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
溝口 孝司 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (80264109)
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Keywords | ネットワーク分析 / 中心性 / 成層化 / 国家形成 / 弥生時代 / 古墳時代 / 日本 / ブリテン島 |
Research Abstract |
本研究は、ネットワーク分析の理論と技法を用いて、日本列島の国家形成期における社会関係の中心化と成層化の条件と、そのメカニズムを解明することを目標とする。ネットワーク分析は、様々なスケールと内容の社会的行為単位(「アクター」もしくは「ノード」)が取り結ぶ多様な関係が創発する社会的制約、競争、派閥、中心性、権力等を、ノード間の関係構造の数理モデル化、解析により明らかにするものである。 本年度の研究実施計画は、日本列島弥生時代後期後半から古墳時代開始期、ブリテン島青銅器時代後半からローマ属州期を対象とし、選択された研究対象地域ごとに、1)それぞれの集落分布状況の把握とノードの析出をおこない、2) それぞれのノード、それが属する地域間の交渉の有無・濃淡の析出を試み、3)それに基づき、各ノードの中心性スコアの析出を試みる、以上であった。 本年度は、昨年度実施した弥生時代中期~後期前半の様相の検討に用いた土器の形態に反映されるノード間の交渉につき、その有無のみならず濃淡を析出するために、土器(主に甕棺)の精密形態分析、加えてその多変量解析的分析を実施し、ノード間関係の濃淡を、ネットワーク中心性の計算に編入することが可能である、という結果を得た。その成果に基づき、弥生時代後期~古墳時代開始期においても同様な作業を進行させた。同時に、同時期の集落動態を、この時期に特異に出現する「港市的」集落間のネットワークを中心に分析検討し、その相互交渉から算出されるネットワーク中心性の時期的変遷が、弥生時代終末期から古墳時代開始期へのノード間関係の変遷とよく相関することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画は、日本列島弥生時代後期後半から古墳時代開始期、ブリテン島青銅器時代後半からローマ属州期を対象とし、選択された研究対象地域ごとに、1)それぞれの集落分布状況の把握とノードの析出をおこない、2) それぞれのノード、それが属する地域間の交渉の有無・濃淡の析出を試み、3)それに基づき、各ノードの中心性スコアの析出を試みる、以上であった。昨年度、ノード間関係の濃淡をネットワーク中心性計算に編入することができなかった反省から、本年度は、ノード間相互交渉を鋭敏に反映すると想定される土器形態の精密分析とその多変量解析をおこない、明確な地理勾配の析出に成功するとともに、ノード間の関係の濃淡を、無、有、有(強)の三段階に分類し、それぞれを0, 1,2とスコア化してネットワーク中心性算出に用いる見通しを得た。このような観点からの弥生時代後期後半から古墳時代開始期の土器の分析を進捗させた。 ブリテン島に関しては、昨年に引き続き、ヘリフォード州でのフィールドワーク(新石器時代エンクロージャー)、ならびに南部・中部の青銅器時代墓地の分布の資料収集をおこない、地域ごとの半閉鎖的なネットワークの存在と、それらの中間地域へのエンクロージャーの集中を確認し、ブリテン島における新石器時代から青銅器時代にかけてのネットワーク構造の特性解明の糸口を得た。 以上、ブリテン島において、青銅器時代後半以降への作業の進捗に若干の遅れがあるものの、ネットワーク分析そのものの方法的洗練に成功し、日本列島においては作業に順調に進捗しており、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今後は、本年度の成果であるノード間の相互交渉の濃淡のスコア化を、土器を用いて具体的に対象時期、地域全般に適用し、日本列島の国家形成期における社会関係の中心化と成層化の条件と、そのメカニズムを解明する。 また、ブリテン島においては、土器資料の少なさから、日本列島と同様の作業は不可能であるものの、遺跡分布から、ネットワーク構造特性の析出とその時期的変遷がたどれることを明らかとしたので、これを新石器時代から鉄器時代の終幕までトレースして、日本列島同様、ローマ属州期以前における社会関係の中心化と成層化の様相の析出をその説明をおこなう。 そして、それらを比較することによって、ネットワーク分析を基軸とした国家形成過程の国際比較をおこない、ネットワークの構造的特性の差異が、ユーラシアの東・西端の両地域の国家形成に与えた影響について解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究最終年度となる次年度は、ブリテン島については補足調査をおこなうための旅費を計上する。また、これまでの成果の報告を通じたフィードバックにより、成果の確実な国際的位置づけをおこなうため、国際学会参加のための旅費を計上する。また、それら、また論文執筆を含む研究成果公表のための英文チェック費用は継続して計上する。資料の最終整理のための謝金・事務用品費も計上する。
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Research Products
(2 results)