2011 Fiscal Year Research-status Report
16~19世紀中国貿易陶磁流通構造の調査研究:東アジア、東南アジア、北米を中心に
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23520926
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
森 達也 愛知県立大学, 日本文化学部, その他(客員共同研究員) (70572402)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中国 / 太平洋沿海 / 貿易陶磁 |
Research Abstract |
本年度の本来の予定は江西省・景徳鎮窯、福建省・徳化窯、福建省・章州窯、広東諸窯など、16-19世紀の中国貿易陶磁の主要な生産地を現地調査を実施して、編年のための基礎資料を収集し、その資料を基に各窯の製品の編年を確立して、さらに各窯の製品の識別基準を明確化することであった。まず、23年8月に福建省南部の章州窯と広東北部の潮州窯の現地調査を実施し、基礎資料を収集した。さらに広東省各地の18-19世紀の青花磁器生産窯の出土資料を広東省博物館、広東省考古研究所において行った。23年12月から24年1月にかけては、福建省中部の徳化窯の現地調査を実施した。徳化窯では徳化陶磁博物館で徳化地域の窯址出土遺物を調査するとともに、18-19世紀の窯址3か所を現地調査し、基礎資料を収集した。こうして収集した窯址出土資料と沈没船引き揚げ陶磁や墳墓出土陶磁を比較研究し、徳化窯、章州窯、潮州窯の各窯の製品の編年確立作業を進めた。こうした調査研究を通じて、16-17世紀のショウ州窯製品と潮州窯製品、18-19世紀の徳化窯製品と潮州窯製品が極めて近似する特徴を持っていたことがわかり、消費地出土遺物の産地分類に大きな課題があることが明らかとなった。こうした状況は、これまで日本国内の研究者が十分に認識していなかったことであり、今後の貿易陶磁研究を進める上でに大きな意味を持つ。24年3月には沖縄での現地調査を実施し、沖縄県埋蔵文化財センター、那覇市教育委員会、今帰仁町教育委員会などで首里城や那覇市・渡地遺跡をはじめとする沖縄各地の遺跡から出土した16-19世紀の中国陶磁の調査を行い、24年度以降の調査研究のための基礎資料を収集した。 23度の調査では、これまで日本ではほとんど知られていなかった広東地域地域で生産された16-19世紀の貿易陶磁の実態の一端が明らかとできたことが大きな成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度に現地調査予定であった窯址のうち、景徳鎮窯の現地調査が連携研究者との日程調整がつかなかったため実施できず、景徳鎮窯製品の編年確立が実施できなかった。そのため、当初23年度に予定していた産地ごとの製品の差異を明らかにする研究が実施できず、この部分の研究を24年度に持ち越すこととなった。そのかわりに24年度に予定していた日本国内の代表的な消費遺跡の調査を一部実施し、研究全体を進捗させた。こうした状況のため、全体的にはやや遅れていると自己判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、まず景徳鎮窯の現地調査および景徳鎮窯製品の編年確立を行う。さらに、23年度の調査研究で得られた他の窯の製品の研究成果との比較を行い、窯ごとの製品識別基準を明確化する。その成果をもとに、研究の中心を太平洋沿岸各地の消費遺跡から出土した中国陶磁の分類・編年へと移行していく予定である。24年度後半には台湾・フィリピンおよび日本国内(本州中心)の消費遺跡出土中国陶磁の現地調査を実施し、その際に調査した資料の分析を行う。25年度には、ベトナムおよびメキシコの消費遺跡出土中国陶磁の現地調査を実施し、調査資料の分析を行う。さらに、3年間の研究で得られたデータを総括して、16-19世紀の中国陶磁に対する総合的な貿易構造の研究を行ない、研究成果の公表に向けた準備を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費は昨年度の残金をあわせて615,552円であるが、この内9万円を物品費、52万円を中国調査、台湾・フィリピン調査、国内の遺跡調査の旅費、5,552円をその他経費として使用する予定である。
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