2012 Fiscal Year Research-status Report
16~19世紀中国貿易陶磁流通構造の調査研究:東アジア、東南アジア、北米を中心に
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23520926
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
森 達也 愛知県立大学, 日本文化学部, 客員共同研究員 (70572402)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
今年度は、まず7月に中国・清時代の重要な貿易陶磁生産地である江蘇省宜興窯の現地調査と出土遺物の調査を実施し、併せて北京・中国国家博物館で開催中の水中考古学成果展を見学し、中国沿海部で発見された沈船引揚げ陶磁を実見調査した。 12月から1月にかけては、浙江省博物館(杭州)で開催されたシンポジウムに出席し、中国貿易陶磁の輸出ルートについての研究発表を行い、引き続き安徽省、江西省、福建省の貿易陶磁生産窯の現地調査を実施した。調査した中で特に重要な生産地は、江西省・景徳鎮窯と福建省・徳化窯であった。景徳鎮では市内と郊外の代表的な窯址を踏査し、特に明・清時代の貿易陶磁に関わる出土資料を実見調査した。今回の調査により、これまで日本で「広東染付」と呼ばれていたヨーロッパ向けの青花磁器が、景徳鎮窯で生産されていたことを確認した。また、清時代後期の貿易陶磁の代表的な器種の出土磁片を調査することができ、これまで生産の実態に不明なことが多かった19世紀前半の状況の一端を明らかにすることができた。徳化窯では、19世紀前半の窯址を複数踏査し、同時代の景徳鎮窯の青花磁器と比較検討することができる磁片を数多く調査し、同じ時代の景徳鎮窯青花と徳化窯青花を分別するための基準となるデータを得た。 平成25年3月には、フィリピン・マニラへ行き、マニラのフィリピン国立博物館でフィリピン沿海で発見された複数の沈没船から引揚げられた中国陶磁と、マニラ市内出土の中国陶磁を実見調査し、16~19世紀の中国陶磁の流通状況を考察するための資料を得た。また、フィリピンに行く途上で台湾に立ち寄り、台北出土の19世紀の貿易陶磁を実見調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は中国の生産地の調査が予定どうりに進まなかったが、本年度は昨年度予定していた窯址調査はすべて終え、徳化窯については補足調査も実施できた。本年度は、台湾、フィリピンなどの消費地での調査も実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、タイ・ベトナムおよびメキシコの現地調査を実施する予定であり、現地調査終了後、これまでの一連の調査資料を整理し、16~19世紀の中国貿易陶磁の全容について考察を行う予定である。なお、最近の円安によって海外調査費が目減りしているため、当初予定していたインドネシアでの調査は見送る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大部分は2回の海外調査の旅費にあてる予定であり、書籍購入などの物品費は全体の10パーセント程度の予定である。
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