2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520927
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
酒井 清治 駒澤大学, 文学部, 教授 (80296821)
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Keywords | 寺院 / 飛鳥時代 / 素弁軒丸瓦 / 韓国扶餘 / 渡来人 |
Research Abstract |
当該年度の調査は、大学院生2名を研究協力者として、埼玉県埋蔵文化財調査事業団が保有する寺谷廃寺出土瓦の分析と、駒澤大学が発掘した窯跡・寺跡出土瓦のうち未発表分の実測、拓本、写真をとり、『駒沢史学』第79号 に掲載した。この調査を通して寺谷廃寺の創建期の平瓦が歪んでいることは、瓦生産に須恵器工人が関わったために高温焼成になったためだと想定できた。この調査、発表はこれまでの資料を充実させると共に、次年度行うまとめを考える材料になった。 また、寺谷廃寺の軒丸瓦の特徴が素弁で、中房が大きく、蓮子が1+4である資料を探す作業をした。地域は飛鳥地域および飛鳥時代の瓦出土地を、報告書や資料集を中心に集成した。また韓国については、国立扶餘文化財研究所、国立扶餘博物館、忠南大学等で出した報告書や図録等を中心に集成したが、研究書、書籍なども対象にした。寺谷廃寺出土瓦の系譜の一端が推定できるようになってきた。 3月には大学院生2名と、国立慶州博物館での百済系瓦の調査、慶州の寺跡調査、国立中央博物館、国立公州博物館、国立扶餘博物館での百済瓦の調査を行った。今回の調査で判明したことは、叩き文様は寺谷廃寺が正格子・斜格子・格子叩きの組み合わせ文で有るのに対して、飛鳥では平行叩きが主体で、扶餘でも平行叩きがほとんどである点が判明したことである。今回の調査では軒丸瓦の瓦当に丸瓦の接合方法を検討することであったが、実見した資料では細部まで分からず今後の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
寺谷廃寺、あるいは平谷窯跡出土と類似する瓦を探索しているが、文様の点では従来からいわれているように、飛鳥地域、あるいは韓国扶餘地域の資料との類似点は想定できてきたものの、技法の検討は遅れている。 叩き技法については様相が判明してきたが、軒丸瓦の瓦当と丸瓦の接合方法は、良好な剥離面を持つ資料を見ていないので十分な検討が出来ていない。寺谷廃寺の軒丸瓦は、良好な剥離面が残っているので、もしそのような資料を実見できれば系譜を考える材料になることであろう。 また、平谷窯跡の溝付排煙口型窯の構造の系譜については宇治市隼上り窯跡との関連が強くなってきたことまで想定できたが、類例がないことから断定が出来ていない。 しかし、寺谷廃寺・平谷窯跡を考えるための資料が順次整ってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度のまとめは予定通り寺谷廃寺が関東の初期寺院と異なり、大型古墳がないのになぜ創建されたのか検討する。 検討方法は、瓦の文様・技法および平谷窯跡の窯構造、羽尾窯跡との系譜関係である。また、素弁軒丸瓦からこの地域に分布する棒状子葉軒丸瓦の変遷を追い、棒状子葉軒丸瓦を焼成した大谷窯跡、石田窯跡、赤沼窯跡との関係を探りたい。 東日本最古の寺跡でありながら大型古墳がないことから、付近を通る東山道武蔵路あるいは官衙との関わりについても検討し、武蔵国の屯倉との関わりも含めて寺谷廃寺の造営背景について想定したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は一つは寺谷廃寺の背景を考えるために地域の歴史的背景の検討を行う。そのために寺跡の創建時期、周辺古墳との関係、古代遺跡との関わり、官衙施設との関係を調査する。特に周辺の古墳、寺跡、窯跡、道路跡との関係である。この調査のために埼玉県内の報告書の収集、コピー、遺跡の調査費用として使用する。 もう一つは、寺谷廃寺の瓦の系譜、窯跡の系譜についても飛鳥地域の調査を行い検討していく。飛鳥地域での調査旅費が必要である。 また、百済地域出土瓦の瓦当接合技法の観察が不十分なので調査旅費が必要である。 このような調査を経て、東日本最古の寺院が渡来人によって造営されたのか、大和との関わりで地方に寺院が造営されたのかを想定したい。
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