2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520929
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
小澤 正人 成城大学, 文芸学部, 教授 (00257205)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中国古代 / 秦漢帝国 / 西安 / 墓葬 |
Research Abstract |
23年度は主に西安地域における墓葬の変遷について検討を行った。 西安地域における時期ごとの墓葬の特徴は以下の通りである。秦代の墓葬は洞室木棺墓が多く、副葬品は陶製飲食器と陶製明器が中心である。陶製飲食器には倣銅陶器の鼎、盒、壺、日用陶器の釜、ぼう、鉢、罐などがあり、陶製明器では倉、竈が出土している。漢1期(武帝前期以前)はこの秦代の墓制を継承しており、やはり洞室木棺墓が多く、陶製飲食器・陶製明器が副葬品の中心となっている。器種には若干変動があり、陶製飲食器では鼎、盒、壺、ほう、罐、陶製明器では倉、竈などが中心である。漢2期(武帝後期~宣帝前期)にも大きな変化は無く、洞室木棺墓、陶製飲食器・陶製明器が中心である。漢3期(宣帝後期・元帝)になると新たに洞室磚室墓が造られるようになる、副葬品では陶製明器の薫炉、灯が現れるなど陶製明器の比重が高まる、といった変化が生まれている。漢4期(元帝~新前期)には洞室磚室墓の普及が進むとともに、陶製飲食器のなかの倣銅陶器の衰退が著しい。漢5期(新後期~後漢初年)になると洞室磚室墓が中心になるとともに、倣銅陶器がほとんど副葬されなくなり、日用陶器の罐と陶製明器が副葬品の中心となっている。 以上の各時期の墓葬の検討から、西安地域では秦代に墓葬の形状としては洞室木棺墓、副葬品としては陶製飲食器(倣銅陶器・日用陶器からなる)と陶製明器を中心とする墓制が成立し、これが前漢時代宣帝期前期まで継続する。やがて宣帝後期から墓葬の形状としては洞室磚室墓、副葬品としては日用陶器と陶製明器を中心とする墓制への変化が始まり、新・後漢初にこの移行が完成する、といった西安地域の墓葬の変遷が明らかになった。 以上の研究成果を受け、西安以外の地域の墓葬の変遷を明らかにすることが、今後の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書では研究の目的を達成するための23年度の研究として、(1)資料の集成、(2)西安地域における墓葬の検討、の2つの項目を計画している。 (1)資料集成は墓葬資料の収集とそのデータベース化を具体的な内容としている。このうち墓葬資料の収集は華北の諸省及び湖北省・湖南省についてはほぼ終了したが、その他の省については継続中である。データベース化については陝西省・湖北省は終了したが、その他の省は現在も作業中である。このように資料集成については当初の計画よりも遅れが認められるが、23年度に資料収集からデータベース化への作業を実践したことで作業フローが確立できており、この遅れは十分取り戻すことができると考えている。 (2)西安地域墓葬については、研究実績にも記したように、西安地域における秦から前漢時代にかけての墓葬の変遷について一定の見通しが得られており、当初の計画通りに進行していると考えている。 以上の研究状況から、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は資料集成を継続して行うとともに、西安地域以外の墓葬の検討を行う予定である。 資料集成のうち、墓葬資料の収集については23年度に未了であった長江下流域・華南地域を対象とする。データベース化については、すでに資料を収集した華北諸省及び湖南省を先行し、長江下流域・華南地域に関しては、資料収集の状況にあわせて作業を行う予定である。 墓葬の検討については、23年度に西安地域で行った方法を踏まえて、他の地域でも進める計画である。 また24年度は中国での調査を行い、資料の補充などを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究費の主な用途は(1)資料の収集、(2)データベース化の作業、(3)中国での調査、である。このうち(1)資料の収集については、中国で公刊される発掘報告書及び研究書の購入を主に考えている。(2)データベース化の作業については、資料整理及びデータ打ち込みのためのアルバイト費用を考えている。(3)中国での調査については、報告書の補充調査と現地での資料収集を行う予定であり、そのための渡航費用等が必要となる。 また上記の経費の他に、研究活動の効率化を図るため、情報機器や文房具などの購入を考えている。 なお本来23年度に使用する研究費の一部が24年度に持ち越しなっている。この状況が発生した理由は(a)震災により資料集成作業の開始に遅れが生じたことでアルバイトが十分に活用できなかった、(b)震災により大学の授業日程に変更が生じ、当初予定していた中国での調査ができなかった、の2点である。このうち(a)は資料集成に係わる事項であり、前記使用計画の(1)資料の収集、(2)データベース化の作業で24年度に請求する研究費と合わせて使用する予定である。また(b)も前記使用計画の(3)中国での調査と関連する事項であることから、これも24年度に請求する研究費と合わせて使用する予定である。
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