2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520929
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
小澤 正人 成城大学, 文芸学部, 教授 (00257205)
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Keywords | 中国 / 考古学 / 墓制 / 秦漢 |
Research Abstract |
本年度は漢水中流域の墓葬について検討した。この地域の墓制は戦国時代中期から秦代にかけ大きく変化する。もっとも大きな変化は副葬品の中心である倣銅陶器が鼎・敦・壺から鼎・盒・壺へと変化することに現れる。前者は戦国時代中期までこの地域を支配した楚の青銅礼器に基づくものであり、後者は新たな支配者となった秦の器種に基づいている。やがて秦は滅亡し漢の統治が始まるが、武帝期までは秦の墓制が継承されている。次の画期は昭帝期以後に現れる。この時期には秦の副葬陶器の組み合わせが壊れるとともに、俑の副葬が本格化して陶製飲食器とともに副葬品の中心となる。 以上の墓葬の変遷を、秦漢帝国による統治のあり方と関連づけて考えると以下のようになる。秦の郡県制は中央から官吏を地方へと派遣し直接統治を目指す体制であり、地方が中央と直接結ばれたことになる。漢水中流域において秦の支配が始まるとともにそれまでの楚の墓制が払拭されるのは、このような秦の直接統治の結果と考えられる。その反面地域色も残されており、秦の統治の浸透が不十分であったことがわかる。この地域では前漢に入ってからも基本的には秦代の墓制が継承され、大きな変化が認められない。漢は秦の制度を受け継ぐとともに、当初は郡国制の下で中央による地方の統制を緩める政策を採っている。漢水中流域の墓制が秦代の墓制を引き継ぐとともに変化が乏しいのは、このような前漢の統治体制のあり方の反映と考えられる。 墓制が大きく変化するのは昭帝期以後である。この時期には俑と陶製飲食器が中心となる新たな墓制が成立するわけだが、この変化は西安地区の墓制の強い影響を受けている。前漢時代では武帝期以後中央による集権体制が整うようになる漢水中流域の墓葬において中央の強い影響が現れるのは、このような集権体制の確立の結果と考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書では研究の目的を達成するための24年度の研究として、(1)資料の集成、(2)西安以外の地域における墓葬の検討、の2つの項目を計画している。(1)資料集成は墓葬資料の収集とそのデータベース化を具体的な内容としており、ほぼ予定通りに進行している。(2) 墓葬の検討については、研究実績にも記したように漢水中流域墓葬の変遷について研究を行っており、当初の計画通りに進行していると考えている。以上の研究状況から、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は資料集成を継続して行うとともに、河南地域の研究を行い、さらに総括を行う予定である。河南地域については主に洛陽を中心に検討を行うことを考えている。総括については検討を行った、西安・漢水中流域・洛陽を比較することで、墓葬の変化から秦漢帝国の統治のあり方を考えてみたい。併せて本年度も中国での調査を行い、資料の補充などを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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