2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520930
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
亀井 明徳 専修大学, 名誉教授 (70204633)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 唐三彩陶 / 越州窯青瓷 / 竜泉窯青瓷 / 景徳鎮窯 / 日中交渉史 / 貿易陶瓷器 / 鞏県窯 / 長安礼泉坊窯址 |
Research Abstract |
1.研究の目的:本研究は,日本考古学が築き上げてきた緻密な貿易陶瓷研究の成果を生かし,中国陶瓷研究,とりわけ窯跡出土品と紀年銘資料を検討し,わが国の貿易陶瓷研究と結びつけ,研究の深化をはかることを目的としている。わが国の貿易陶瓷研究にとって重要と考えられる4つの課題に焦点を絞り,日本出土品を悉皆的に調査し,重要資料は自ら実測,観察をし,中国出土陶瓷も実見調査して,両国資料を比較検討する。この研究はペダンチックな自己満足ではなく,緊急調査に追われている研究者に,年代決定と窯跡同定において,役に立つ研究になること,若手中国陶瓷研究者へ研究方法と姿勢を伝達することを目的にしている。2.研究の実施計画:現在,次の4件が重要課題と考えている。(1)唐三彩陶研究―わが国唐三彩陶の出土品の種類・遺構・分布地・遺構年代と,中国における最近の窯跡調査による成果と結合する。(2)唐宋代越州窯青瓷の推移ーわが国の平安時代に輸入された青瓷のなかで,量的に最も多いのは越州窯系青瓷であり,その編年的な考察を,中国の窯跡調査を参考にしてわが国の編年の修正をおこなう。(3)明代竜泉窯青瓷の編年研究―宋代以来輸入されている竜泉窯青瓷のなかで,1400年前後の明代製品の編年が欠けていた。この10年来,明代竜泉窯跡の発掘が行われ,その成果が公開されてきた。この成果を生かして,日本出土品と比較する。(4)景徳鎮窯青白瓷,卵白釉瓷の編年研究―元代青花瓷については,すでに内外の研究を集成し成果を公表した。青花瓷と並行ないし先行して現われる青白瓷・卵白釉について,わが国の出土品を窯跡調査と結合して,編年の再構築の必要性があり,遺構年代の決め手になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の研究課題とした唐三彩陶について,次の2点を追求した。1.日本出土の唐三彩陶発見遺跡について,この科研申請時点では35遺跡であったが,この1年間で7遺跡を新たに確認し,42遺跡となった。新たに出土した遺跡については,破片を現地の保管施設で確認し,実測および撮影をおこない,調書を作成し,それを調査担当者に送った。これは研究の目的の項目で述べているように,多忙な行政機関の発掘担当者に少しでも役立つことを希求しているからである。静岡市ケイセイ遺跡出土の三彩筺形品について,23年度に公刊された発掘報告書に掲載されている。また,兵庫県芦屋廃寺,淡路国分寺跡,岡山県備前国分寺跡の各出土三彩陶はいずれも小片であり,担当者も国産品との区別がつきがたかったが,実見することによって,中国産と確認できた。これらについても各保管者にレポートを送り資料として役立つようにしている。従来三彩陶の発見地に国府・国分寺跡が相当数あることによって,未報告の中に三彩陶があることが予測されるので,讃岐国府跡第1次調査出土の土師器を97コンテナー(約30万破片)を再点検した。結果として,発見できなかったが,このことは有意義と考えており,来年度も機会があれば他の遺跡に於いて実施する予定である。2.中国における唐三彩陶窯跡の調査が,我が国の奈文研の協力によって進展し,その成果を取り入れることが必要となっている。23年度は,窯跡のある西安市,洛陽市などの踏査は実現できなかったが,河南省考古文物研究所などによる報告書を点検し,わが国出土品との比較をおこなった。 これらの調査によって,23年度に計画していた研究はほぼ達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の研究計画は,当初の予定どおり実施し,以下の2項目を追加する計画である。1.研究テーマ:唐宋代越州窯青瓷の推移―わが国の平安時代に輸入された青瓷のなかで,量的に最も多いのは越州窯系青瓷であり,その編年的な考察は中国における研究水準を上回っている。しかし,ここ10年来の窯跡の調査によって,新事実が生まれ,これを生かしてわが国の編年の修正が求められている。日本各地の遺跡出土品を,報告書でチェックして,実際に実測・撮影・調書作成を行いたい。2.さらに,欧州の美術館に古くから保管されている中国陶瓷のなかに,紀年銘資料が有る。これらは編年の基準となるので,各美術館等に調査を行うために連絡をして許可待ちの状況である。とりわけフランスのギメ美術館,ドイツのベルリン工芸美術館,オランダのプリンセスフォッフ美術館の所蔵陶瓷器を調査する計画である。3.鹿児島神宮に古くから保管されてきた陶瓷器20点について,23年度に調査を実施し,ほぼ完了したが,一部見直して,今年度に報告書を刊行する予定である。これらは全て花瓶であり,中国青瓷,青花瓷,およびタイ製品と,それらを模倣した日本製品が対になって保管されており,従来から知られてはいたが調査がなされておらず,はじめて学界に正確な資料を提供できると確信している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度未支出金額については,主として24年度分と合わせて欧州博物館所蔵陶瓷器の調査旅費として使用します。
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Research Products
(1 results)