2012 Fiscal Year Research-status Report
中央アナトリア西部における鉄器時代フリュギアの遺物研究
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23520942
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Research Institution | The Middle Eastern Culture Center in Japan |
Principal Investigator |
山下 守 (財)中近東文化センター, その他部局等, 研究員 (70370195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 公仁 (財)中近東文化センター, その他部局等, 研究員 (60370194)
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Keywords | 考古学 / アナトリア / 鉄器時代 / フリュギア |
Research Abstract |
本調査研究は、中央アナトリア西部における鉄器時代フリュギアの遺物研究を通して、フリュギア西部地域に特有な物質文化を把握することを目的としている。具体的には、アンカラ・アナトリア文明博物館、エスキシェヒル博物館等の博物館が所蔵する、中央アナトリア西部で発見された鉄器時代フリュギアの土器、金属器、土製品等の考古資料を調査、記録し、さらにこれを他地域のフリュギア資料と比較研究することによって、フリュギア西部の物質文化に特有な地域的特徴を明らかにすることを目指している。 中央アナトリア西部におけるフリュギア文化の重要遺物の大部分がエスキシェヒル博物館に集中して所蔵されていることが明らかとなった平成23年度の調査結果を踏まえ、平成24年度においては、同博物館が所蔵するフリュギア遺物の中でも西部フリュギア文化に特有な地域的特徴を把握する上で特に重要であると考えられるミダス・シティー遺跡から出土した遺物に対して調査を集中的に行った。具体的には、平成24年度の遺物調査でエスキシェヒル博物館に所蔵されている数百点に及ぶミダス・シティー遺跡の出土遺物の内、青銅器、鉄器の金属器を中心に、土器、土製品等の遺物を合わせて200点近く実測、写真撮影し、さらにそれらの精査、評価を行った。 平成24年度の遺物調査の結果、ミダス・シティー遺跡の出土遺物に代表される様な中央アナトリア西部における鉄器時代フリュギアの遺物の傾向としては、アナトリア最西部イオニア地方のギリシャ文化からの影響を強く受けている可能性が高いことが判明して来た。こうした結果からは、フリュギア西部地域の物質文化の特徴をさらに明確に把握するためには、エスキシェヒル博物館に所蔵されるミダス・シティー遺跡の出土遺物以外の多数のフリュギア遺物を精査する必要のあることも明白となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本調査研究では、中央アナトリア西部の諸博物館に所蔵されている鉄器時代フリュギアの土器、金属製品、土製品等を精査、実測、写真撮影を行うことが計画されている。平成23年度の調査においては、中央アナトリア西部の諸博物館に所蔵される鉄器時代フリュギアの遺物の巡見に留まり、計画されていた博物館での遺物の精査、実測、写真撮影を行うことがほとんど出来なかったため、調査の進展状況にかなりの遅れが見られた。 しかし、平成24年度の調査においては、計画を見直して、平成23年度における巡見調査からフリュギア文化の重要遺物の大部分が所蔵されていることが判明したエスキシェヒル博物館において集中的に遺物精査を行った結果、多くの博物館における少数の遺物を寄せ集めて研究するより、より効果的、効率的にフリュギア西部地域の物質文化の地域的特徴を把握することが出来る様になった。 そうした意味で、本調査研究の進行状況は、研究計画の見直しを通じて、平成23年度の遅れを取り戻したと言え、全体的に見ておおむね順調に進展していると評価出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
中央アナトリア西部における諸博物館に所蔵された鉄器時代フリュギアの遺物研究を通して、フリュギア西部地域の物質文化に特有な地域的特徴を把握することを目的とする本調査研究は、平成24年度の調査において、フリュギア関連遺物を大量に所蔵するエスキシェヒル博物館において、フリュギア西部地域における最重要遺跡であるミダス・シティー遺跡からの出土遺物を集中的に精査することによって、 当地域のフリュギア文化に特有な性格をおおまかに把握することが出来た。 平成25年度の調査においては、平成24年度の調査結果をさらに展開、精密化させることを目指し、エスキシェヒル博物館に所蔵されるミダス・シティー遺跡の出土遺物以外のフリュギア遺物を出来る限り多く精査すると共に、これら西部フリュギア地域の遺物を中央フリュギア、東部フリュギア地域の遺物と比較研究することによって、フリュギア西部地域の物質文化に特有な地域的特徴をさらに明確化させて行くつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の本調査研究においては、長期に渡る博物館での遺物の実測、撮影作業を行ったことから、平成24年度の直接経費の内、撮影機材等の物品費、現地滞在の旅費は計画通り使用されたが、計画より少数の実測協力者しか調査に参加出来なかったことから、計画されていた実測協力者への謝金が大半未使用のまま残るところとなった。 平成24年度と同様にかなり長期間の博物館における遺物の実測、撮影作業と、さらにその後の調査結果の最終的な整理、総括作業を行うことを予定している平成25年度の本調査研究においては、平成24年度の未使用直接経費と平成25年度の直接経費を合わせて使用して、実測、撮影用備品、資料整理用ソフト等を新たに購入すると共に、エスキシェヒルにおいて行われる長期の博物館遺物実測作業では4名の現地実測協力者を、またアナトリア考古学研究所において行われる資料整理、総括作業では3名の現地作業協力者を採用する計画である。
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