2011 Fiscal Year Research-status Report
三次元レーザー計測を利用した古墳時代甲冑製作の復元的研究
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23520945
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 総括研究員 (10250375)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 考古学 / 古墳時代 / 甲冑 / 三次元レーザー計測 / 型紙 |
Research Abstract |
古墳時代の甲冑製作に関する研究では、技術系統を峻別し、製作工人集団を抽出しようとする試みがなされてきたが、成功したとは言い難い状況である。 本研究では、複雑な立体構造を有するがゆえに二次元的な検討では十分に分析できなかった甲冑製作、とりわけ設計段階、製作前半段階(鉄板の裁断・打延)について(1)三次元レーザー計測で精密な実測データを集積、(2)a.データを展開し、特徴的な鉄板の形状・寸法を平面上で比較、b.計測データより断面の曲線形状を比較、(3)設計図の差異を検討し、同じ設計図による甲冑の抽出、さらに鍛造段階における型の使用の有無を検証する。今後の検討の基礎となる良好なデータを得るため、遺存状態が良好な地下式横穴墓出土品を計測対象とする。 23年度は以下の4点を柱としたが、基礎データの収集にもっとも力点を置いた。(1)短甲の三次元レーザー計測と観察:地下式横穴墓出土の4領の短甲(横矧板鋲留短甲2、三角板鋲留短甲1、三角板革綴短甲1)について三次元レーザー計測を実施し、同時に肉眼による詳細な観察もおこなった。(2)計測データの加工:データを加工し、通常の実測図に必要な前後左右4方向×表裏の画像データを作成した。(3)甲冑および甲冑出土地下式横穴墓の基礎データを収集:甲冑自体については、冑、その他の附属具の検討を、地下式横穴墓については出土状態、共伴遺物などの情報を収集、検討をおこなった。共伴遺物の一部は実測図を作成した。(4)計測実施予定短甲の接合:24年度に三次元レーザー計測予定の短甲につき、接合・クリーニング作業をおこなった。(3)・(4)については計測対象資料を所蔵する宮崎県立西都原考古博物館において研究支援者の助力を得ておこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4領の短甲についてレーザー計測を実施し、観察をおこなった。また、データを加工し、通常、実測図に必要な前後左右4方向×表裏の画像データを作成した。さらには甲冑および甲冑出土地下式横穴墓の基礎データを収集、検討をおこなうなど、分析に必要な基礎的なデータ集成が計画通りに進捗した。一方、次の分析段階に使用する展開画像の作成、曲線形状比較断面画像の作成は、資料計測時期が秋にずれ込んだこともあり、形状・法量比較に最適となる展開方法、断面切断位置の決定を試行している段階にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに、甲冑の三次元レーザー計測をすすめ、基礎データの集積に努める。なお、24年度計測予定資料には良好な遺存状態ながら、大きく変形した資料が含まれる。これについてはデータ上で本来の形状に補正をおこなう。そのノウハウの蓄積をはかり、将来的に変形資料も比較対象資料として扱える可能性を広げる。 展開画像作成、曲線形状比較断面データ作成をまず23年度計測資料からおこなう。24年度中早期に着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度も23年度同様、地下式横穴墓出土の4領の短甲につき三次元レーザー計測を実施する。宮崎県立西都原考古博物館所蔵資料を対象とするため、計測にかかる費用、調査旅費が23年度同様、大きな割合となる。また所蔵機関での資料整理も引き続き実施する。資料の計測、調査をすすめるとともに、研究成果の一部を発表し、その抜刷作成にも研究費を使用する。
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