2012 Fiscal Year Research-status Report
三次元レーザー計測を利用した古墳時代甲冑製作の復元的研究
Project/Area Number |
23520945
|
Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, 企画課, 総括研究員 (10250375)
|
Keywords | 考古学 / 古墳時代 / 甲冑 / 三次元レーザー計測 / 型紙 / 地下式横穴墓 |
Research Abstract |
24年度は、1.短甲の三次元レーザー計測を実施し、比較検討の基礎となる良好なデータを蓄積。2.計測対象甲冑および出土地下式横穴墓の基礎データ収集。3. 三次元データ上で短甲間の構造を比較、同一設計に基づくと考えられる一致(あるいはきわめて類似した)例とその種類を特定する。の3点に重点をおいた。 1については、当研究期間内予定分の計測を完了した。今回はあわせて破片資料、附属する一部の冑の計測も実施した。2では計測資料の附属具および共伴甲冑破片の接合作業、共伴武器類の実測をおこなった。作業は宮崎県立西都原考古博物館において研究支援者の助力を得た。3では、横矧板鋲留短甲について、とくに鉄板の形状・大きさ、各段の位置関係の一致に着目した。その結果、2種類の一致例(A.六野原1号地下式横穴墓出土例と本庄10号地下式横穴墓出土例、B.六野原古墳群出土例と西都市石貫出土例)を確認した。さらに一致例同士を比較すると、覆輪、蝶番板の幅など細部では異なる点があることがあきらかとなった。このことは設計段階・製作段階前半/後半の間、あるいは製作の組み立て工程まで/仕上げ工程の間で、製作工房のありかたに差異があることを予想させるものである。破片資料である石貫出土例の全体構造復元にあたっては、一致例である六野原古墳群出土例を基礎に三次元データ上でおこない、その手法の有効性を確認した。 なお、研究計画では、三次元データを展開し、二次元的に構造比較することを想定していたが、本来の形状を保った資料を基礎とすれば、必ずしも二次元的に比較しなくても、三次元データのまま、モニター上での比較で十分に可能であることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間内に予定していた三次元レーザー計測を予定通り完了することができた。通常、実測図に必要な4方向×表・裏の画像出力データもあわせて作成した。 鉄板の形状・大きさ、各段の位置関係の一致に着目し、2種類の一致例を確認できたことにより、設計段階、製作前半段階(鉄板の裁断・打延)の比較から、同じ設計図による甲冑の抽出、さらに鍛造段階における型の使用の有無を検証するという、本研究の目的のいくらかを達成し、さらなる検討への足がかりを得ることができた。 破片資料である西都市石貫出土短甲の全体構造復元にあたっては、一致例である遺存状態が良好な計測例(六野原古墳群出土例)を基礎に三次元データ上で比較検討をおこない、この手法が、破片資料の全体構造復元に有効であることを実証した。
|
Strategy for Future Research Activity |
同一型式の短甲において、構造上(鉄板の形状・大きさ、各段の位置関係)の一致例を2種類確認することができ、同じ設計図による甲冑の抽出、さらに鍛造段階における型の使用の有無を検証するという、本研究の目的を達成しつつある。計測データをさらに検討し、一致(類似)例、異なる事例をあきらかにする。本研究における計測データだけでは絶対的な比較資料数が足りないが、今後、甲冑製作、製作工房の全容を解明するための基本データとなるよう、その充実をはかる。同時に、方法の有効性の検証、三次元計測という手法の利点を生かした、より洗練された比較検討方法の開発をおこなう。最終年度である25年度においては、24年度、有効性が確認された手法(1)を用いて、また新たな手法(2)を用いて、以下の通り、甲冑の構造復元をおこなう。 1.三次元データ上での破片資料の全体構造復元 短甲:六野原10号地下式横穴墓出土横矧板鋲留短甲、冑:木脇塚原A号地下式横穴墓出土長方板革綴衝角付冑 2.変形した資料をデータ上で本来の形状に復元する。 短甲:小木原1号地下式横穴墓出土横矧板鋲留短甲。構造的に類似するとみられる(六野原古墳群出土例・石貫出土例)を基礎に本来の形状への変形を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
○宮崎県立西都原考古博物館への旅費:計測資料の所属機関。実物の検討、また一部の資料について実測図を作成するため。 ○資料整理謝金:甲冑出土地下式横穴墓の基礎資料収集の一環として共伴資料の実測作業(小木原1号地下式横穴墓など)。作業は宮崎県立西都原考古博物館において研究支援者の助力を得る。 ○成果発表の抜刷作成。 ○報告書作成:甲冑計測データ、三次元画像などを掲載し、考察を加えた報告書を作成する。
|
Research Products
(1 results)