2012 Fiscal Year Research-status Report
農村空間の商品化からみた日本の余暇・観光振興の地域差に関する実証的研究
Project/Area Number |
23520947
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田林 明 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70092525)
|
Keywords | 農村地理学 / 農村空間 / 商品化 / 余暇・観光 / 地域差 |
Research Abstract |
本研究は農村空間の商品化という視点から、日本における余暇・観光地域の再編と発展の可能性を探り、さらにこの側面から日本の地域差と地域構造を解明することを目的とした。まず、農村空間の商品化によるレクリエーションや観光の振興の諸類型を把握し、日本全体でどの地域にそのような現象がみられるかを整理し、地図化した。結果として、大都市の周辺と大都市圏外縁、そして全国の山地や海岸の既存の観光地域とその周辺、さらにはポテンシャルであるが北海道から沖縄までの広大な山地、などにおいて農村空間を活用したレクリエーション・観光振興がみられた。農村空間を消費する人々が集中しているのは大都市であるので、大都市との距離によって、地域差が生じていることがわかった。 この研究では、東京を念頭において、大都市近郊、大都市周辺、大都市圏外縁、そして遠隔地という地域的枠組みで事例地域を選択し、フィールドワークに基づく調査を行っている。大都市圏外縁を中心に研究を進めた昨年度に引き続き、本年度は遠隔地である富山県黒部川扇状地において、研究協力者とともに現地調査を実施した。黒部川扇状地では農村の景観や産業、生活様式、伝統文化の価値を地元住民が発見して、それを保存・活用しようとする活動を地元民が行っているが、近年ではこれらに関心をもつ都市住民が増加している。また、漁村では水産物の直売と漁村景観や湧水を生かした観光に力を入れ、それによって地域振興を図っている。甲府盆地でも調査を行い、ワインなどの産物や渓谷美を生かした観光、扇状地や丘陵、山地を生かしたルートでの散策やマラソン、サイクリングなどの観光が進められていた。また、大都市近郊の東京都練馬区での直売と市民農園、さらには大都市周辺にあたる埼玉県北部の道の駅を中心とした観光化と地域振興についても現地調査を行い、関連資料を収集した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観光・余暇に関する既存の研究や研究代表者らのこれまでの調査・研究によって、日本全体の農村空間の商品化によるレクリエーション・観光振興が著しい地域を地図化することができ、さらにそれらの地域差を把握することができた。その成果を論文および著書にまとめた。また、東京近郊と首都圏、北陸地方において現地調査を行ったが、特に富山県黒部川扇状地の農村と漁村における現地調査の結果を論文にまとめることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は最終年度であるので、これまで実施してきた現地調査の結果をまとめ、それに基づいて日本における余暇・観光からみた地域差と地域構造の解明につとめる。大都市圏外縁と遠隔地の事例調査については、すでに論文として発表することができたので、東京近郊の市民農園や農家レストランと東京周辺の農産物直売所を中心とした観光化の事例地域の補足調査を行い、これらの結果を論文にまとめる。現地での補足調査は6~7月を中心に集中的に実施する。また、関東地方と東北地方南部、中部地方の都県庁等の観光や農業関係の部署において、聞き取りと資料収集を行い、首都圏およびその周辺における農村空間の商品化による観光の一般的傾向と地域差を整理する。 現地調査および文献・統計分析も含めた、全体的な研究結果のまとめを行い、平成25年11月の人地理学会の大会、もしくは平成26年3月の日本地理学会春季学術大会において発表する。これと平行して、学術雑誌への投稿論文の準備をする。なお、平成25年8月に国際地理学連合京都大会があるので、そこでこれまでの成果について発表し、研究のまとめ方等について内外の専門家からアドバイスを得ることにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の成果を収録するために紀要「人文地理学研究33号」の印刷費を予定していたが、当初の見込額よりも印刷費が安くなったことと、一般校費等を使用することにより、480,537円を次年度に繰り越すことになった。 平成25年度には補足のための現地調査とこれまでに収集したデータの整理・分析を行い、研究全体のまとめを行う。調査の際の旅費とデータの整理・分析・地図化のための人件費・謝金に費用がかかる。さらに調査のための地図・空中写真、統計データを購入する必要がある。また、国際学会での発表および英語論文作成のために、英文校閲費が見込まれる。
|
Research Products
(11 results)